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これをやった」と誇れるものが一つでもあるだろうか

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  • Started 12 years ago by tavnmrgd

  1. 一方、自分はといえば、東京の自宅だけでなく、借り部屋とはいえ、世界中に幾つも別宅をもっており、こうしてベンチにぼんやりと座っている間にも、銀行口座には、何の報酬なのかもよく分からないような大金が振り込まれ続けている。 そして、おそらく、あの男が一生かけても稼ぎきれないような金額を、自分はその年の税金分として払っているのだろう。 似ているところは微塵《みじん》もない。 あるのは落差ばかりである。 同じ人間として生まれて、人間とはここまで不平等なのかと愕然《がくぜん》とするほどに,OAKLEY サングラス 店舗。 にもかかわらず、あの男とは、何か波長が合うものを感じてしまった。男の方も、同じ匂いを嗅《か》ぎ付けたからこそ、サラリーマン風の男ではなく、こちらに話しかけてきたのだろう,オメガ 時計 人気。 あの男は、ベンチに座りこんでいた青年を同類と「勘違い」したのではない。むしろ、一目で本質を見抜いたのだ。外見ではない。精神の形が同類だと……。 あの初老の男は、裸でいる王様を見て、見たままに裸だと言い放った子供のようなものだった,ヴィトン 財布 モノグラム。 いや、同類というよりも……。 あの男の方がましだ,chloe 財布 人気。 なぜなら、あの男には他人に誇れるものがある。 話している最中に、男はふいに、或《あ》る有名な高層ホテルの名をあげて、「知っているか」と聞いた。むろん、知っていたから、「知っている」と答えると、「泊まったことあるかい」と重ねて聞いた。そのホテルで行われたイベントの類《たぐ》いには呼ばれて行ったことはあるが、泊まったことはなかったので、「ない」と答えると、男は得意げに鼻をうごめかして、「あれは俺が作ったんだぜ」と言った。 そして、男は誇らしげにこう続けた,coach 財布 激安。「俺も泊まったことは一度もないが、近くを通るたびに、いつも立ち止まっては見上げてるんだ。ずっと見てても飽きないね。なんかこう、出世したわが子を見るような気がしてなぁ。見てると嬉しくなるんだよ」 このとき、男が羨《うらや》ましいと心底思った。 もし、自分があの男の年くらいになったとき、こうしてベンチに座って、見知らぬ人間に向かって、「若いときにこれを作った。これをやった」と誇れるものが一つでもあるだろうか。 そう自問自答してみた。 答えはノーだ。 残念ながら、今の自分には、他人に誇れるものは何もない。大ヒットをした曲一つにしても、メジャーになったアイドル一人にしても、いずれも軽い気持ちで出してみたら、たまたま今の時代の感性のようなものにマッチしたのか、爆発的に売れたというだけで、これから三十年、四十年たっても、これらのものが残っているという自信というか手ごたえが全く得られなかった。 虚空《そら》に向かって、際限なく、生まれた先から消えていくしゃぼん玉ばかり吹いていたような空虚感しかない。 このときはじめて、あのホームレスのように、全てを失ったあとでも、「これを作った」と他人に誇れるものが欲しいと切実に思った。虚空に向けてしゃぼん玉を吹くのではなく、一つ一つ石を積み重ねて堅牢《けんろう》な建築物を作りあげるように、確かなもの、これから先、何十年、何百年たとうとゆるぎなく存在し続け、人々の記憶に残り語り継がれる「何か」を作りたい。残したい。 たった一つでいいから、そういうものを生み出したい。たとえば、どんなに時代が変わっても人々に口ずさまれ続ける曲。それを歌える本物の歌手《シンガー》。そんなものを生み出したい。 本物の歌手を育てたい。いっときの流行に左右されることなく存在し続ける本物の歌手。母のような……。 そう念じたとき、ふっと一人の少女の顔が頭に浮かんだ。 彼女の顔が頭に浮かんだとき、思わず、これだというように右手をきつく握り締めていた。ホームレスから貰《もら》った一本のタバコが、まるで天からの啓示ででもあったかのような確かな手ごたえをもって、手の中で粉々に潰れるのを感じた,chloe 財布 新作。 それは、数カ月前、或《あ》るアマチュアバンドのオーディションの審査員をやったときに、出会った一人の少女だった。 名前は、照屋火呂《てるやひろ》といった……。 7 あの娘《こ》なら……。 あの娘なら、育て方によっては、不世出の大歌手に育ちそうな気がする。 あの娘の第一声を聴いたとき、一瞬にして、全身の鳥肌が立った。子供の頃、はじめて、舞台に立った母の第一声を聴いたときのように……。 音感と声質に、非凡なものが感じられた。 もし、あれがアマチュアシンガーのコンテストか何かだったら、彼女は、間違いなく入賞、それどころか優勝すらしていたかもしれない。 ただ、あくまでもアマチュアバンドのオーディションということで、ボーカルだけを評価するものではなかったことから、バンドそのものの総合点の低さから、落とさざるをえなかったが……。 それでも、このまま落とすのは忍びなくて、他の審査員に働きかけて、審査員特別賞というのを急遽《きゆうきよ》もうけて与えた。あの賞は、バンドというより、あの少女一人に与えたものだった。 あの娘を、一シンガーとして世に出すことができたなら……。 今まで正規の訓練を受けたことがないためか、発声法も自己流というか粗削《あらけず》りで、プロの耳で聴けば欠点も多分にあったが、何よりも資質がある。たった一年、必要な訓練を受けるだけで、見違えるように成長するだろう。そう予感させるものがあった。 あの娘を育てたい。 歌えるアイドルとしてではなく、歌だけで勝負できるシンガーとして。 そう思いつくと、矢も楯《たて》もたまらなくなって、彼女の連絡先を調べ、宝生自身が受話器を取って電話をしていた。 電話をかけるまでは、当然、あの娘がこの話に乗ってくると信じて疑わなかった。一度オーディションに落ちているのだから、この申し出は、彼女にとって奇跡にも近い僥倖《ぎようこう》であるはずだと。電話の向こうで小躍りせんばかりに喜ぶはずだと。 そのときの彼の意識の中には「一度捨てたものを拾ってやる」という多少思い上がった気持ちがなかったといえば嘘になるだろう。 ところが、いざ、電話に出た本人と話してみると、相手のテンションは意外なほど低かった。「宝生」と名乗っても、「え?」と聞き返すほどで、どうやら、こちらの名前さえろくに覚えていない様子だった。しかも、驚いたことに、話を最後まで聞きもしないで、アッサリと断ってきたのである。「歌手になるつもりはない」と。 それを聞いて、少し慌てた。 アマチュアバンドのコンテストにボーカルとして出場したということは、将来は歌手になりたいと思ったからではないのか。
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    Posted 12 years ago #

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