三重団体の子供が通う学校を建てているのだ。去年の災害で半壊したこの学校は、去年の六月、仮修繕をして開校している。「先生、あの学校、いつできるの?」 一人が指さす。「今年の十月だそうだ」「いいなあ、新しくて」 他の一人が言う。「馬鹿を言え,オメガ スピードマスター。新しくしないでもすむお前たちの学校のほうが、よっぽど幸せだ。ここの生徒は、百六十三人のうち、六十三人が流されて、九人死んだんだぞ」 耕作はこの数字を、決して忘れてはいない。生徒たちは一瞬、しゅんとなった。「みんなここで、死んだ生徒たちのために、黙《もく》〓《とう》しよう」 生徒たちは神妙に目をつむった。手を合わせている者もいる。耕作の出た日進の小学校では、更に多く十一人死んでいる。が市街の学校では、死んだのは只一人だ。それは、耕作を訪ねようとして泥流に呑まれた坂森五郎である。 その小学校から一キロ近く歩いた頃、耕作の家が見えてきた。市街から既に四キロ来た勘定になる。「あ、先生の家だ!」「ほんとかい!? あれが先生の家かい?」 生徒たちが喜ぶ。「そうだ。先生が飯を食べて、寝る所だ」 耕作の家は、道路より五十メートルほどひっこんだ所に見おろせた。日本手拭いをあねさんかぶりにかぶった佐枝が、納屋から姿を現した,OAKLEY サングラス 店舗。鶏が家のまわりに遊んでいる。佐枝が耕作のほうを見て手をふった。耕作が応えて手をふった。生徒たちも手をふった。拓一はどこに行ったのか、姿が見えない。耕作は、何となく新たな思いでわが家と母を見た。今朝この家を出たのに、まるで、しばらくぶりに会ったような、懐かしさを覚えるのだ。手をふってくれた生徒たちの気持ちもうれしかった。 一丁ほど行くと、道のすぐ傍に吉田村長の家があった。松の木立の蔭に、がっしりとした家だ。弥生が道端に立って、生徒たちを珍しそうに眺めていた。耕作を見ると、うれしそうにニコッと笑ったが、ちょっと恥ずかしそうにうつむいた。その愛らしいしぐさに、耕作は思わず微笑して頭をなでてやった。その時、うしろのほうで、「ここが吉田村長の家だぞ」 と言う松坂愛之助の声がした。愛之助は節子の家出を綴り方に書いた子だ。と、他の一人が叫んだ。「泥棒村長!」 耕作が制止する暇もなく、たちまちその声に五、六人が和した。「泥棒村長、泥棒村長」 弥生がわっと泣き出した。耕作が手を上げて、「止まれ」の合図をした。耕作の緊張した顔に、生徒たちはお互いに顔を見合わせた。耕作は弥生を抱き上げ、生徒たち一人一人の顔を見た。邪気のない目が耕作をみつめる,ルイヴィトン 財布 モノグラム 二つ折り。が、さすがに耕作の視線を受けとめかねてうつむく者もいる。うつむいたのは今叫んだ生徒たちだ。耕作はややしばらく黙って、生徒たちをみつめた。その耕作の目に不意に涙が光った。今、「泥棒村長」と叫んだ生徒の親たちは、そう子供たちに言い聞かせているのだろう,oakley サングラス 激安。あるいは親たち同士で、村長の悪口を言っているのであろう。子供には罪がない。そう言わせた親たちに罪がある。とは言っても、生徒たちはもう六年生なのだ。六年を卒《お》えてすぐ社会に働く者もいる。単に子供とは言い切れない年齢なのだ。 耕作は遠足を楽しいものにしたかった。だから、少しのことでは叱《しつ》責《せき》すまいと思っていた。だが、事はちがう。生徒たちをみつめながら、耕作の口がふるえた。弥生が、耕作の肩に頬をつけて、しゃくり上げている,coach 財布 アウトレット。耕作は、あふれ落ちそうな自分の涙を、ぐいと腕で拭いた。生徒たちは不安げに、その耕作をみつめている。耕作は、大人のあり方が、子供の心を汚している事実を思うと、叱るにも叱れない。が、黙って見過ごしてはならないのだ。 ようやく、耕作は口をひらいた。「弥生ちゃん。ごめんな。弥生ちゃんのお父さんは、立派なお父さんだ。泥棒村長なんかじゃない。先生は近所だから、よっくそのことは知っている……」 生徒たちはしんとして、耕作の言葉に耳を傾ける。「弥生ちゃん、弥生ちゃんのお父さんは、日本一の村長だ。どんなに人に悪く言われても、決して悪く言い返さない。いや、それどころか、悪く言う人たちのことを、かばっている」 耕作は、弥生がわかってもわからなくても、生徒たちに聞かすべく語った,オメガ 腕時計 メンズ。「弥生ちゃんのお父さんは、どうしてみんなに悪く言われるか、知ってるか。この泥流で目茶苦茶になった田んぼを、元にかえそうとして真剣になっているから、悪口を言われるんだ。だけどなあ、先生も、先生の兄さんも、あの篠《しの》原《はら》の小父さんも……」 耕作は近くの家の名をあげ、「みんな、みんな、もとの田んぼにしようと、真剣に努力しているんだ。だけどそれを、只金がかかるだけだと思う大人たちが嫌ってな。泥棒村長だなんて、悪口を言ってるだけの話なんだ。そんな悪口を言う奴は、言わしておけ。だけど、日本一の村長だと思っている人はたくさんいる」 弥生がいつしか涙をおさめて、耕作の顔をみつめていた。わからぬながらも、耕作の心が胸に伝わるのだ。「今、生徒たちが何人か、泥棒村長って言っただろう。あれはな、生徒が悪いんじゃない。先生が悪いんだ。泥棒でもない者を、泥棒だと思いこむような生徒がいることは、先生が悪いんだ。ゆるしてくれな弥生ちゃん。こんな小さな弥生ちゃんを泣かせて、ごめんな」 耕作の、一語一語に、真実がこもっていた。さっき叫んだ生徒たちは、うなだれたまま顔を上げようともしない。と、一人が前に飛び出して来た。「すみません! 先生」 つづいて何人かが飛び出して来た。「先生! 泥棒村長と言って、ぼくが悪かったです」 耕作は頭を横にふった。「いや、先生の責任だよ。先生をゆるしてくれな。大人たちをゆるしてくれな。よくあやまってくれた。先生はうれしい。みんな弥生ちゃんにあやまって、頭をなでてやってくれ」 生徒たちは素直に弥生の頭をなで、口の中でもごもごと、「ごめんね」 とあやまった。「よーし。少し遅れた。もうすぐ坂道にかかるが、駆け足だぞ」「ハーイ」 生徒たちの心が一つになった。耕作は先頭に立って走り出した。 耕作はうれしかった。自分の気持ちを素直にわかってくれた生徒たちがうれしかった。叱らないでよかったと思った。この純真な子供たちに対して、確かに大人たちに責任がある。 三分ほど走ると、ゆるい勾《こう》配《ばい》にさしかかった。速度をゆるめずに耕作は登って行く。この坂道は、去年の九月、再爆発の時、佐枝と共に逃げた道だ。このあたりから次第に、道端に青草が萌《も》え、タンポポが咲いているのが目につく。 坂道を少し駆け登った所で、耕作は並足に戻した。みんなハアハアと息を切らしている。うしろをふり返って耕作がにっこりと笑った。
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あれはな、生徒が悪いんじゃない
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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