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しかし、顔がただ醜く歪《ゆが》んだだけだった

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  • Started 12 years ago by vper43ck

  1. 「公安のほうでわたしを使っていないと言うのなら、そうなんでしょう。それでいいではないですか」「きみは……」 野村は充分に間を置く。芝居っ気が多すぎる、桜田は苛々《いらいら》した。「公安の答えを取り違えているようだ。公安はきみを使っていない。そう言ってきた」「ですから——」「きみは公安警察官としては不適格であるので、左遷したと言っている。きみはもはや公安の人間ではないんだそうだ。冷静さを失いやすく、注意力に欠けていて、理想主義者的な面があり、事実を掴《つか》み取る能力にも劣る……感想は」「それも、まあ」正面切って左遷などと言われては気分が悪い。だが、それも自分を守るためというなら、ない手ではない。「向こうがそう言うなら……」 心に僅《わず》か、波風。我知らず座り直した。彼らはなぜ、所属にこだわるのか。「宙ぶらりんというわけだ。きみはセンターにいるがセンターの仕事はしていない。公安ではきみを使っていないと言う。では、だれがきみを使っている」「お答えできません」「きみは給与をセンターからもらっているね」「ええ」「その他には」「お答えできません」「明細に載らない手当をもらっているのかね。どこからもらっている」「ですから——」 違う話をしよう。野村は遮り、一度韮崎を振り返った。韮崎は依然窓際にいる。野村は続けた。「有働警視……五年前有働さんは事故に遭い、植物状態となった。それと同時に、有働さんが率いていた内偵班が叩《たた》き潰《つぶ》され、すべての記録が消えた。センターに侵入者が入り、警視のデスクを漁《あさ》っていった。有働警視始め、秋葉辰雄以下数名の人物を襲った者たちは、間違いなく警視が目をつけた組織だったはずだが、一切の記録は消えた……この事実を知っていたかね」「……初耳です」「この事実を知る者は、そう多くはない。なぜならば、侵入の手口、侵入者の持っていた情報など、すべての痕跡が内部に詳しい者の犯行だと指し示しているからだ。もしかしたら警察内部の人間が関与しているのではないか……」 ——そうだったのか。 腑《ふ》に落ちた思い。分室は汚職警官を追っているのだ。韮崎と野村は、桜田に公安の情報提供をさせようとしている。 ——そうはいかない。 野村は続けた。「もちろん、捜査は行われた,クロエ トートバッグ 新作。我々も動いたし監察官室も動いた。しかし、手掛かりは掴めなかった……ところで、いがみあっているばかりが我々じゃない」 野村は再び韮崎を見た。その視線を受け、韮崎がようやく口を開いた,oakley サングラス 激安。「野村くんの発案で、わたしを含めて刑事の参事官らと公安の参事官たちが、昨日会合を持った。どんな話が出たと思う?」 韮崎の口ぶりは重々しく、憂いを含んでいた。桜田相手に口を開くのも嫌だ、といった風情。「見当もつきません」 実はついていた。公安幹部が桜田の情報提供を許可したのだ。 ——もしそうなら、だんまりを決めるわけにはいかなくなる。せめて南城室長を通せと言うしか……。「知っているか……公安では有働、秋葉事件で動いている部署はどこにもないそうだ」 言葉の意味を理解するのに、時間がかかった。時間をかけた、というほうが正しいか。「……今、なんと」「公安は、五年前の事件を捜査していない。だれも動いていない。刑事部に下駄を預けている。もちろん、専従員はいない」 公安流の方便に違いない。方便でないはずがない。「まだ分からないのか」野村は笑い、桜田に注視した。「分からないようだ」「いったい——」苛つきを隠さなかった。「なんだと言うんですか」 野村が言う。「分かりやすく話そう。公安ではもとから、有働警視事件に一切関与していなかった。いいか、もとから、だ。公安は、有働警視の件は純粋な事故死として認識し、事件認定しなかった。有働さんの死は害意によるものではない。ここからが大事だ……公安は五年前、秋葉や能見らの事件についてどういう対応をしたと思う」 野村は動かない目で桜田を見つめた。桜田は思わず目を逸《そ》らした。直後、目を逸らすべきではなかったと後悔した。だが、目を上げることができない。「チンピラ同士の内輪もめと受け取った……捜査はしていない。最初から、公安は何もしていなかった。有働警視と秋葉銃殺事件を結び付けてもいなかった。つい昨日までは、我々が会合を持つまでは……意味、分かってきたかね」「何をおっしゃっておられるのか、わたしには……」 愛想笑いを浮かべようと試みた。しかし、顔がただ醜く歪《ゆが》んだだけだった。間繋《まつな》ぎに手を組んでみた。手のひらは汗でじっとり濡《ぬ》れている。 初めて、小さな疑念が生まれていた。「きみはどこのだれのために、能見亮司の過去を調べていたのかね」「そんなことはしていません」「有働達子さんから電話があった。このセンターにね……まだ説明が欲しいか」 認めてしまっていいのか、あくまでも隠すべきか。言葉を探しているうちに、野村が続けた。「達子さんは、桜田という男がきたが本当にセンターの人間なのか、と問い合わせてきた。その電話を受けたのはわたしだ。わたしは彼女に、桜田が何を訊《き》きましたか、と尋ねた。彼女は夫の件でちょっと、と口を濁した。彼女は能見亮司の名を出さなかったが、それだけあれば充分,オメガ 時計 人気。あとは達子さんと同じ立場にいる人数人に、電話をかけて質問するだけで事足りる,oakley メガネ。きみは能見亮司の過去を追っていた。公安は能見亮司など知らんと言い、捜査はしていない。一方のきみは公安のために能見亮司を追っている。つじつまが合わんじゃないか。どちらが嘘をついている。きみか、公安幹部か」「それは……」「そこまでして嘘をつかねばならない理由が、公安にあるか。それほど国益のために重要な人間か。反社会的ではあるが、思想的背景のない、職業的犯罪者をなぜ、公安が追う?」 桜田の混乱は頂点に達した。「公安では、きみを監察室預かりにして調べてもらうことに、なんの異議も唱えず同意した。苦情など出てはいないが」 ——まさか……そんな……。 桜田はうなだれた。視線の落ちた先には、自分の靴のつま先があった,ルイヴィトン 財布 レディース。能見の過去を追って東京を歩き回り、大阪にもいった靴。靴底はだいぶ減り、寄った皺《しわ》には埃《ほこり》が溜《た》まって筋になっている。 ——なんのためにおれは、この靴を磨《す》り減らしてきたのか……。「さっきの話だが——」野村の声音が変化していた。同情が含まれている。「覚えているかね,ルイヴィトンモノグラム 長財布。センターに侵入した者は警察内部の事情に詳しい者だ、という推理を。ここできみと結び付く。
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    Posted 12 years ago #

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