」 寺西保男は黒の手から逃《のが》れようともがいたが、黒の方がちからがあった。 黒は寺西の躯《からだ》を小突《こづ》きまわした。相手の顔を殴るのは避《さ》けた。顔が腫《は》れたり傷がついたりすると、職員から訊かれる。抵抗《ていこう》しない相手を殴ったというだけでそれは懲戒《ちょうかい》ものであった。 黒は、寺西の腕《うで》をつねったり睾丸《こうがん》を蹴《け》りあげたりした,ヴィトン 財布 モノグラム。「おい、黒、寮監《りょうかん》だ!」 廊下から外を見ていた一人の少年がさけんだ,coach 財布 新作。「おい、席に戻《もど》るんだ。めそめそした面《つら》を見せるなよ」 黒はやっと寺西をはなすと部屋にひきかえした。 同時に寮監がはいってきた。「なにをさわいでいる」 寮監は、黙々《もくもく》と食事をしている少年達を眺《なが》めまわした。 誰《だれ》も返事をしなかった。「寺西、なぜ泣いている?」「はい。なんでもありません」「喧嘩をしたのか。宇野、誰が寺西を泣かしたのだ?」「泣かしたのは俺ですよ」 と黒がたちあがった,OAKLEY アウトレット。「なぜ泣かした」「寺西は議論に敗《ま》けて泣きだしたのですよ。寺西は、一年前を昔《むかし》のことだと言い、俺は、昔というのは五百年前のことだ、と言ったのです」 黒の答えかたは巧妙《こうみょう》だった。「そんなことで泣く奴があるか。冷めないうちに食事をすませろ」 寮監は少年達に命じると部屋から出て行った。 寮監が出て行ってから少年達は再び昼食をはじめた。「宇野。保護委員はどんな奴だった?」 黒が、寺西をいじめたついさっきのことは忘れたように、行助に訊いた。「いい人だったよ」「そりゃ、宇野が成績がいいから、相手もやわらかく出たんだろう。利兵衛や俺は、そう簡単にはここから出れないだろうな」「まあ、そんなことを言わずに、我《が》慢《まん》した方がいいよ」「おめえは秀才だからな」 黒をはじめ利兵衛は、行助が人を刺《さ》したということに一目おいていた。 行助は、昼食をたべながら、保護委員と交《か》わした話をおもいかえした。「報告書に目を通したが、きみは、こんなことをするような少年ではないね」 と保護委員は言った。 行助はそれをききながら、俺が奴を刺した行為を、役人達はいまだに疑問に思っているのだ、と知った。「この面接が済むと、地方更生保護委員会で審《しん》理《り》され、やがて仮退院ということになるが、家に帰ってから、兄さんとうまくやって行けると思うかね」「表面上では大丈夫《だいじょうぶ》だと思います」「世田谷区の保護司の話では、現在、きみの兄さんは、四谷にすんでおり、去年の秋に自動車事故をおこしているらしい。きみの事件のときも、警官の心証を害しているし、かなり爆発性《ばくはつせい》な面がある。それに比べ、きみは始終おちついている。この点が、われわれには解《わか》らないところだが、表面上では大丈夫だというと、家に帰ったら、兄さんと仲直りが出来そうかね」「仲直りですか。……それはたぶん出来ないと思います。ただ、母の生家が小田原にあるので、僕は、ここを出たら、そちらに引きとられることになるでしょう。ですから、仲直りが出来ないことは、そうたいして深く考える必要はないと思います」「仲直りが出来ないというのは、なにかわけがあるのか?」「僕の内面の問題なんです,ヴィトン 長財布。どうしても許せないのです。でも、そのために、僕が事をおこす、などということは、絶対にありませんから、その点は御安心ください」 保護委員はそれからもいくつかの質問を試みたが、行助は、修一郎を刺した動機については、竟《つい》に語らなかった。 面接時間は約四十分だった。面接を終えてから職員室を出てきたとき、これでここから出れるのか、と思った。ここを出たら、小田原の母の生家に行こう、という考えは、かなり以前からあった,coach 財布 人気。おまえ、うちの子にならないかね、と母方の祖母から言われたことが数度あった。「それで、宇野、いつ地《じ》獄坂《ごくざか》からおりて行くんだ?」 再び黒が訊いた。「それはわからんな」「委員は、おめえのような優秀な奴だと、出れる日をにおわすんだがな」「俺はいそがないよ」 行助は箸《はし》をおきながら、自分に言いきかせるように答えた。 宇野理一は、行助が少年院から出てくる件については、やはり彼なりに悩《なや》んだ。行助についてはこちらが心配することはなかった。問題は、実子の修一郎だった。成城の家に帰ってきたいという修一郎を、理一はかなりきつい言葉でことわったが、行助が少年院から戻《もど》り、成城にすむようになれば、修一郎がだまっているはずがなかった,クロエ 二つ折り財布。 このことで、理一はある日の午後、会社に顔を見せた父の悠一に相談をした。「修一郎は長男だ。成城にひきとるのが当然だろう」 悠一は言った。「しかし、考えてみてください。自分の妻を女中としかみていない息子《むすこ》を、そう簡単に家に入れるわけには参らんですよ」 理一は言いかえした。「大学生だといってもまだ子供だ。そのうちに自分の悪かったことに気がつくよ。それよりだ、刃《は》物《もの》をふりまわす行助の方をよほど注意する必要がある」「あの子は刃物をふりまわすような子ではありません」「しかし現実に修一郎は刺《さ》されているではないか」「私は、刃物を持ちだしたのは、修一郎だと思います。そして刃物をうばいあっているうちに、あやまって刃物が刺さった、としか思えません。澄江は修一郎を庇《かば》って事実を伏《ふ》せていますが、刃物を持ちだしたのは修一郎ですよ」「おまえは、自分の子をそのように見ているのか」 悠一は不機《ふき》嫌《げん》に詰問《きつもん》した。「私は公平に見て、そう考えたのです。行助は落ちついている子です。お父さんに相談したいというのは、何故《なぜ》修一郎が刃物を持ちだしたのか、そしてどうして刺されたのか、これを修一郎からききだして欲《ほ》しい、ということです。いまのままの修一郎では、成城に帰ってきても、澄江と行助とうまくやって行けないよりも、まず私と修一郎がうまくやって行けないでしょう。甘やかして育てたからあんな子になってしまったのです。いまのうちにもとに戻さないと、修一郎は人間的に一生だめな男になってしまうでしょう」「すると、おまえは、刃物を持ちだしたのは修一郎だときめているわけか」「そうです。上野毛の自動車事故を見てもわかるように、つまり、あの子は、卑怯《ひきょう》にできているのです」「あれは、おまえ、向うが右に出てきたから追突《ついとつ》したのだ」「それはそうですが、相手の車が横転しているのに、逃《に》げた行《こう》為《い》をどう思いますか」「まだ子供だよ」「お父さんは、そうやって、自分の孫をだめにしてしまうのですか」「将来は宇野電機の社長になる青年に、そうこまかいことを言ってもはじまらんだろう」「私は、修一郎がいまのままでは、いずれ禁《きん》治《ち》産者《さんしゃ》にしてしまうよりほかありません」
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「おい、黒、寮監《りょうかん》だ
(1 post)-
Posted 13 years ago #
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