」こう云いながら、私はこの場合、彼に対してどういう処置をとったものかと途方にくれた。私はそゞろ、一旦忘れていた昨夜からの徹夜の疲れを感じ始めたので、なろう事なら彼のお供を断りたかった。これからわざわざ向島まで出かけて行って、めあてのない探偵事業の助手を勤めるなぞは、考えてみても馬鹿々々しかった。そうかといって、彼を独りで手放すのは、なおさら安心がならないのであった,coach 財布 激安。「そりゃ、君に云われるまでもなく、僕は昨日の朝から一日かゝって、水神の附近を隈(くま)なく捜索したんだが、鱗の目印はどこにもないんだ。そうして見ると、多分その目印は犯罪の行われる当日にならなければ、施されないものなのだ。彼女はきっと、今朝になってからどこかあの附近へ目印を附けたに違いない。もっとも僕は昨日のうちに、大概この辺ではあるまいかと思われるような場所を二つ三つ物色しておいたから、今日はそれほど骨を折らずに見附かるだろうと予期している。しかし何にしても暗くなっては不便だから、直ぐに出かけるに越した事はない。さあ立ちたまえ、早くしよう。そうして用心のために、君もこれを持って行きたまえ。」こう云って、彼はデスクの抽き出しから一梃のピストルを取って、それを私の手に渡した,OAKLEY サングラス 店舗。彼がこれほど熱心に、これほど夢中になっているものを、止めたところでどうせ断念するはずはない。要するに彼の妄想を打破するためには、やっぱり彼と一緒に向島へ行って、今日になっても鱗の目印などはどこにもない事を証明してやるのが一番適切である。そうしたら如何に園村が気が変になっていても、自分の予想の幻覚に過ぎなかった事を悟るだろう。私はそう気が付いて、すなおにピストルを受け取りながら、「それじゃいよいよ出かけるかな。シャアロック・ホルムスにワットソンという格だな。」こう云って機嫌よく立上った。お成門の傍から自動車に乗って、向島へ走らせる途中においても、園村の頭は依然としてその妄想にばかり支配されていた,ルイヴィトン 財布 モノグラム 二つ折り。ソフトの帽子を眼深(まぶか)に被って、腕を組みつゝじっと考え込んでいるかと思うと、忽ち次ぎの瞬間には元気づいて、「………今夜になれば分ることだが、それにしても君、この犯罪者は一体どういう種類の、どういう階級の人間だろうね。せめてあの晩に、あいつらの服装ぐらい確めておけばよかったんだが、どうも真暗で見分けがつかなかったんだよ。とにかく、ポオの小説にある暗号文字を使ったりなんかしているんだから、決してあの女も男も無教育な人間ではないね、いや無教育どころか、かなり学問のある連中だね。………ねえ君、君はそう思わないかい。」などゝ云った。「うん、まあそうだろうな。案外上流社会の人間かも知れないな,coach 財布 ピンク。」「けれどもまた、一方から考えてみると上流社会の人間ではなくって、ある大規模な、強盗や殺人を常職とする悪漢の団員のようにも推定される。それでなければ、あゝいう暗号文字などを使用する訳がない。あの暗号文字は、かなり面倒なものだから、僕のような素人が読むには、一々ポオの原本と照らし合わせて行かなければならない。ところがこの間の角刈りの男は、僅か五六分の間に便所の中であれを読んでしまったのだ。して見ると彼らは、あの暗号を年中使用していて、僕らがABCを読むと同じ程度に、読み馴れているに違いない。畢竟(ひつきよう)彼らは、暗号を使わなければならないような悪い仕事を、今までに何回となく繰り返しているのだ。………さあ、そうなってくると、彼らはなかなか一と通りの悪漢ではないように感ぜられる。」われわれを乗せた自動車は、日比谷公園の前を過ぎて馬場先門外の濠端を、快速力で疾駆している。「しかしまあ、彼らが何者であるか分らないところが、僕らにとってはまた一つの興味なのだ。………」と、園村はさらに語り出した。「………僕は最初、彼らの犯罪の動機となっているものは、恋愛関係であろうと思っていたけれど、彼らがもし、恐るべき殺人の常習犯であるとすれば、恋愛以外に何らかの理由が伏在しているのかも測り難い。いずれにしても、僕らにはたゞ、今夜の午前一時三十六分に、向島の水神の北において、何者かゞ何者かに紐(ひも)をもって絞殺されるという事だけしか分っていないのだ。そこが著しく僕らの好奇心を挑発する点なのだ。………」自動車は既に丸の内を脱けて、浅草橋方面へ走って行った。* * * * * * * * * *それから三時間ほど過ぎた、晩の八時半ごろのことである,coach 財布 人気。私は、気の毒なくらい鬱(ふさ)ぎ込んで、黙々として項垂(うなだ)れている園村を、再び自動車に乗せて芝の方へ帰って行った。「………ねえ君、だからやっぱり何かしら君の思い違いだったんだよ。どうも君の様子を見るのに、この頃少し昴奮しているようだから、なるべく神経を落ち着けるようにしたまえ。明日からでも早速どこかへ転地をしたらどうだろう。」私は車に揺られながら、むっつりと面を膨(ふく)らせて考え込んでいる園村を相手に、頻(しき)りにこう云って説き諭していた。実際、その日の夕方、六時から八時過ぎまで私は園村に引き擦り廻されて、水神の近所をぐるぐると探し廻ったが、案の定鱗の目印などは見附からなかった。それでも園村はあくまで剛情を張って、見附けないうちは家へ帰らないと称していたのを、私は散々に云い宥(なだ)めて、やっとの事で捜索事業を放棄させたのである,ヴィトン 財布 メンズ。「僕はほんとうにこの頃どうかしている。君にそう云われると、何だか気違いにでもなったような気がする。………」と、園村は沈んだ声で呻(うめ)くように云った。「………だがしかし、どうも不思議だ。どうしたって、彼処(あすこ)辺(いら)に目印がなければならないはずなんだが、………僕がいかに神経衰弱にかゝっていたって、一昨日の晩の事は間違いがある訳はない。もし僕に何らかの間違いがあるとすれば、あの暗号の文字の読み方か、あるいはあの文章の謎の解き方について、どこかで錯誤をしているのだ。とにかく僕は内へ帰って、もう一遍よく考え直してみよう。」彼がこう云って、未だに妄想を捨てゝしまわないのが、私には腹立たしくもあり、滑稽にも感ぜられた。「考え直してみるのも宜(よろし)かろうが、こんな問題にそれほど頭を費したってつまらんじゃないか。たとえ君の想像が実際であったにもせよ、そんなに骨を折ってまで突き止める必要はありはしない。僕は昨日から一睡もしないので、今日はひどく疲れているから、この辺でひとまず君と別れて、内へ帰って寝る事にする。君も好い加減にして今夜は早く寝る方がいゝ。
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」などゝ云った
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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