。敵の探信儀に分離を気取られないためには、〈伊507〉の陰に隠れ続けなければならない,coach 財布 激安。一刻も早く深度を下げ、陰からはみ出してしまった船体を隠したいところだが、ここで慌てた操艇をすると〈伊507〉と接触する危険性がある。艇内に感知用の水を溜め込んだ〈ナーバル〉は、バラストタンクを空にしてどうにか浮力を保っている状態で、〈伊507〉との相対距離は約十メートルしかないのだ。曳航索が双方を結びつけていれば、それがスクリューに絡まないよう留意する必要もあった。 焦りは禁物。何度目かの呟きを呑み下して、征人は深度計の目盛りを読み、艇内注水レバーを定位置に戻した。額をしたたる汗とも海水ともつかない水滴を素早く拭い、縦舵の舵輪を握り直す。(敵潜、方位一一〇。距離六百) 唐木水測長の報告を、「面舵で回頭中。本艦の左舷真横に出ます」とパウラが補足する。前部座席の背もたれごしに見えるその頭は、システムの遮断とともにヘルツォーク・クローネをぬぎ捨てているので、形のよい頭を包むやわらかな髪が直《じか》に目に入ってくる。そこだけ生身の質感を浮き立たせたパウラの後頭部を見つめ、なぜかずしりとした重みが肩にのしかかるのを感じた征人は、〈伊507〉と〈ナーバル〉、指標〈ハ〉の位置関係を思い描くことに集中した。 指標〈ハ〉を引きつけながら次第に減速し、小刻みに舵を切って右に回頭した〈伊507〉は、いまはアシーガ湾に横腹を向ける形で潜航している。対して指標〈ハ〉は減速せずに〈伊507〉を追い抜き、アシーガ湾の手前で大きく弧を描いて、その艦首をこちらに向けつつあった。雷撃で確実に相手を仕留めるには、敵艦の真横に回るのが基本。減速して横腹を見せた〈伊507〉は、〈ハ〉に理想的な射点を与えたことになる。反撃される心配がない以上、できる限り接近してこちらを仕留めようとするはずだった,coach 財布 ピンク。 アシーガ湾の入口に待機する敵旗艦を背にして、指標〈ハ〉が必殺の魚雷を撃ち込んでくる瞬間が、勝負の分かれ目になる。(舵戻せ。前進微速)と発した絹見の声に、征人はモーターの出力を下げて〈ナーバル〉を並進させた。曳航索が引っ張られるぎゅっという軋みが艇底に伝わり、「下げすぎ。速度を上げて。増速一」とパウラがすかさず指示を出す。 くそ、フリッツ少尉は母艦の動きを感じ取れって言ったけど、なんにもわかりゃしない。目が早いのなんのと言われても、肝心な時はいつも五里霧中だ。(敵潜、方位一〇〇。距離五百五十)とスピーカーから流れる声も数字の羅列としか聞こえず、征人はじりじりする思いで舵輪を握りしめた。モーターの振動で小刻みに蠕動する水面を見下ろし、天井から降り注ぐ結露の水滴を見上げた時、「来た……!」と短く詰まったパウラの声が耳朶を打った。「敵潜、魚雷発射。雷数二……四」 前部座席から発したパウラの声に、(スクリュー音複数,oakley メガネ! 方位〇九五より急速に近づく)と唐木の声が重なり、征人は反射的に排水ポンプの作動スイッチに手をのばした。思ったより早い。動揺を抑える間もなく、「上昇して,スピードマスター オメガ!」とパウラの指示が飛び、勝手に動いた手足が排水ポンプのスイッチを入れ、横舵のフットペダルを踏み込んでいた。(距離五百!) 深度計の針が五メートルほど上昇する。それまで遠かった探信音波の金属音が途端に大きくなり、征人は全身が粟立つのを感じた。〈伊507〉の陰から浮上した〈ナーバル〉に、敵潜の探信音波がまともに当たるようになったのだ,oakley サングラス 激安。風よけが取り払われ、荒れ狂う暴風に生身をさらしたような感覚。これまで重ねてきた犠牲、やってきたことのすべてがこの手にかかっている、そう思えば思うほど手足がこわ張り、状況判断の頭が働かなくなって、不安と緊張ばかりが膨れ上がってゆく。連続する探信音波に殺気を感じ取りはしても、目前に迫った魚雷の気配はまったくつかめず、征人は絶望的な気分になった。〈伊507〉との位置関係も、敵潜の位置も頭から消し飛び、まるで見当がつかない。 どうする、清永。こんな状態でおれにやれるのか? 「取り舵二十!」と叱るようなパウラの声が飛んで、征人は機械的に舵輪を動かした。左に回頭した〈ナーバル〉の船体が〈伊507〉と直角に向き合い、殺到する魚雷群と正対したはずだが、やはり計器の針が動いたという感触しか得られなかった。二ノットの微速で進む〈伊507〉の針路、指標〈ハ〉の方位、〈ナーバル〉の回頭角度。ひとつひとつを頭に捉え直すうち、予想より早く方位計の針が動いてしまい、「止めて」と発した鋭い声に慌てて舵を戻した。 落ち着け、しっかりしろ。汗のしたたる瞼をきつく閉じ、開く。(距離四百,coach 財布 人気!)とスピーカーがわめき、征人は舵輪のすぐ上に見えるパウラの頭を覗き込んだ。ここからは表情は窺えず、「敵潜、取り舵で回頭中」という硬い声だけが狭い艇内に響く。感知の最中にある体は微動だにせず、征人はふと、独り取り残された時の苦い感覚を思い出した。 子供の頃、寂しさに耐えかねて母の勤める遊郭に赴くたび、何度も見た背中。もう大きいんだから、独りで帰れるわね? そう言い、勤めに戻ってゆく母の背中
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「取り舵二十
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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