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原子爆弾、本土決戦、一億玉砕

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  • Started 12 years ago by g410zstw

  1. 。いつの間に取り出したのか、九七式|手榴弾《しゅりゅうだん》が村瀬の手に握りしめられていた。「おれは人間だ」="" 安全ピンの鉄輪とつながった紐《ひも》に親指をかけ、村瀬は手榴弾をゆっくり顔の前に掲げた。狂ったのではない。最初から——自分たちが訪れるずっと前から、村瀬は覚悟を固めていたのだろう。そうでなければ、自決用の手榴弾を事務机の引き出しに入れておいたりはしない。落ち着き払った物腰も、自嘲的な態度も、すべてここに来るための芝居だったと理解した中村は、恐怖より強い悔しさに胸を塞がれ、ゆっくりあとずさる村瀬の顔を睨み据えた。「人間は、自分の頭で考える。いまなにをすべきか。この国を真実の破滅から救うために、すべきことはなにか。決して他人任せにはしない。責任はすべて自分で取る」="" 九七式手榴弾を前面に突き出し、じりじりと後退する村瀬の足が止まり、左手が鉄扉のノブをつかむ。そのまま中で爆死されたら電信記録も吹き飛び、最悪、保管庫そのものが落磐《らくばん》で埋もれかねない。とりあえずそれだけのことを考えた中村は、「それが、浅倉大佐の謀反に協力した理由ですか」と夢中で搾り出した。「謀反……?」="" おうむ返しにした村瀬は、言われるまで考えもしなかったという顔つきだった。ぞっとする胸を抑え、中村は「目的はなんです。〈伊507〉の現在位置は?」とたたみかけた。="" 距離は三メートル弱。村瀬が考える隙を少しでも見せれば、飛びかかって押さえ込める。そう踏んで時機を窺う中村をよそに、村瀬は話にもならないという苦笑を浮かべた。「彼は純粋な男だよ」と応じた声には、憐れみの響きさえあった。「……そして、人を超えた者だ」="" 真顔になった村瀬の目に理性の光が戻り、背筋に一本柱が通ったように見えた,オークリー サングラス 激安。刹那、この男は違うという直観が全身を貫き、中村は棒立ちになった。="" ただ追い詰められて自決をするのではない。この男には見えている。今日を生きるしかない自分たちには見えないもの——この国が迎えるべき明日が見えている。原子爆弾、本土決戦、一億玉砕。それらの言葉を乗り越えた先にある明日、この国の未来がはっきりと見えていて、そのために殉死《じゅんし》しようとしているのだ。多くの軍人がそうしてきたように。="" 人を超えた者、浅倉が指し示した未来。それはなんだと自問した体が硬直し、その間に、素早く鉄扉を開いた村瀬の体が保管庫の中に滑り込んだ。考えるより先に体が動き、中村は床を蹴って村瀬の後を追った。「大尉……!」と叫ぶ天本に、「人を呼べ!="" 早く」と怒鳴り返し、電気の消えた保管庫に踏み込む。戸口から差し込む光が鉄製の棚を照らし、その上に重ねられた無数の紙|綴《つづ》りと、段ボール箱をぼんやり浮かび上がらせる。一対の目が闇の奥でぬらりと輝くのを見た中村は、なにも考えずにそちらに飛びかかった。="" 恐怖はなかった。知りたいという衝動が体の全部を支配し、中村を跳躍《ちょうやく》させた。紙の束が落ちる音、村瀬の息づかいが耳元をかすめ、鋭い衝撃が肩に走る。電信記録の山を蹴散らし、床に転がった中村は、腕をすり抜けた村瀬が戸口の方に走るのを見た。="" 紙束を脇に抱え、手榴弾を掲げた村瀬の影が廊下の逆光に浮き立つ,オークリー アウトレット。安全ピンの鉄輪が弾け飛び、床に落ちる音が中村の耳朶《じだ》を刺激した。「日本民族、万歳,オークリー フロッグスキン!」="" 天皇陛下とは言わずに、村瀬はそう絶叫した。たとえようのない違和感が中村の胸中にわだかまり、直後に発した閃光がそれを永遠に吹き散らした。[#ここから7字下げ]※[#ここで字下げ終わり]「死んだ……?」="" 受話器がぐんと重みを増し、取り落とさないよう、もう一方の手を添えなければならなくなった。続く電話の声はことごとく頭の中を素通りし、すべてを重くする重力だけが、軍令部第五課室の課長席に収まる大湊に残された。="" 中村が死んだ。実りの少ない調査行に随行し、自分以上によく働いてくれたあの男が。まだ若い心で軍令部の硬直を嘆き、自分以上の情熱をもって浅倉を追っていた中村が、死んでしまった--------------------------

    Posted 12 years ago #

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