。「いただくものをいただいて、この場から去りたいと思うんですが」 ベルデンニコフはこちらを一瞥《いちべつ》した。「よかろう。ここから去ることを許可する。ボブロフ、払ってやれ」 思わず安堵《あんど》のため息が漏れる。無事に報酬を得ることができそうだ。これほど心臓に悪い依頼人はいない。 だが、ベルデンニコフからボブロフに視線を移したとき、アサエフは凍りついた。 ボブロフの手にはオートマチック式の拳銃《けんじゆう》が握られていた。その銃口がアサエフに差し向けられる。 アサエフが一歩も動けないうちに、耳をつんざく銃声が轟《とどろ》いた。 引き金は引かれた。それがアサエフの最期の認識だった。[#改ページ] 幸運 岬美由紀は、入学したばかりの小学校の校庭で、舞い散る桜の花を見あげていた。 その視界に映っているのは、自分よりずっと大きな父と、そして母だった。 両親はここでなにをしているのだろう。そうだ、ふたりは講堂の後ろのほうの席で、入学式を見守っていた。ふだん家では身につけたことのないような洒落《しやれ》た服装をしているのは、そのせいだ,UGG ブーツ 正規品 見分け方。 母がなにかを喋《しやべ》ったが、よく聞き取れなかった。その言葉は父に向けられたものだったからだ,アグのムートンブーツ。 おとなの会話というのは、随所でわかりにくい。いまも父は笑っているが、なにを可笑《おか》しいと感じたのか、子供のわたしにはぴんとこない。「そりゃそうさ」と父は、母を見つめながらつぶやいた。「以前は詭弁《きべん》にしか聞こえなかったんだけどね。いまになって、確信してるよ。娘のためなら死んでもいいと思ってる」「またそんなこと」母は笑った,ブーツ 激安。「おおげさね」「ほんとさ。きみもそうだろ? もし美由紀になにかあったら、命を捨ててでも助けにいくよ」父の目が美由紀に向けられた。見下ろす父のまなざしは優しかった。「な? お父さんはいつでも美由紀の味方だよ」 その父の表情に、美由紀は見いった。 大|頬骨《きようこつ》筋と眼輪筋が同時に収縮している。すなわち、つくり笑いではなく、本当に笑っている。心の底から喜びを感じている。 父の瞳には、幼い美由紀の顔が映りこんでいた,ugg ブーツ 価格。わたしを見る目。そして、一片の曇りもなく愛情を注ごうとしている父。一瞬のうちに、それらすべてが確認できた。 よかった、と美由紀は思った,ムートンブーツ メンズ。 人の感情を見抜けるようになったいまだからこそ、両親の気持ちが知りたかった。特に、あまり目を合わせることさえなかった父について、その本心をたしかめたかった。 いまはっきりわかる,アグムートンブーツ楽天。父はわたしを愛してくれていた。わたしの将来を楽しみにしてくれていた。わたしは恵まれていた。 美由紀は両手を伸ばし、両親と手をつないだ。父が右手、母が左手。 そしてゆっくりと歩きだす。胸にはもう空虚さなどかけらも残っていない。温かさだけがある。 わたしと両親は、心を通わせあっている。いつも一緒にいる……。 と、そのとき、聞き覚えのある女の声がした。 母以外の女の声だった。「美由紀。ねえ、美由紀」 レム睡眠からの目覚めは、いつも急速だ。美由紀はその実感とともにベッドで跳ね起きた。 まだ焦点のさだまらない、ぼやけた視界。おなじみの光景がそこにあった。 寝室と、開け放たれた戸の向こうにリビングルームが見える。 美由紀にとっては不相応に広い部屋。アメリカン・ポップアート調のインテリアで統一したリビングには、白いグランドピアノも置いてある。 視界にとらえたそれらの要素がひとつずつ、美由紀の現状を再認識させる。 わたしは……子供ではない,アグブーツ激安。二十八歳、空自を除隊して現在は臨床心理士だ。 思わずため息が漏れる。 マッハ二・〇の戦闘機を操るうちに培われた動体視力、のちに学んだ臨床心理学の知識と、表情筋から感情を読み取る方法。それらが結合して、心のなかを読む女などと喧伝《けんでん》されるようになった。マスコミがつけたあだ名は、千里眼。 両親は幹部候補生学校時代に事故死している。 複雑かつ数奇な人生の紆余《うよ》曲折ののち、偶然に備わったこの特技が、小学生だったころのわたしに使えるはずがない。 それなのに、夢のなかでは疑う気さえ起こらなかった。心から望んでいたのかもしれない。いまに至って、両親のわたしへの想いをたしかめたい、と。 ひとつだけ願いがかなうのなら、この技能を身につけたまま小学生のころに戻って、両親の顔をひと目でいいから見つめたい。胸の奥でそう望んでいたのだろう。 すべてが幻にすぎなかったと知り、美由紀は空虚な気分になった,ムートンシューズ。いまさら願望を夢に見るなんて。 眠りから醒《さ》めて、意識がはっきりしてくる。 さっき聞きつけた女の声も夢だったのだろうか。妙にはっきりと聞こえた気がするが。 と、リビングからぶらりと人かげが現れた。 趣味のいいスーツに身を包んだ、美由紀と同世代の痩身《そうしん》の女は、にっこりと笑って指先にぶらさげたペンダントをしめした
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ねえ、美由紀」 レム睡眠からの目覚めは、いつも急速だ
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Posted 12 years ago #
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