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1743_20

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  • Started 12 years ago by liymhn59

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  1. 山の中に家があつたので 昼飯をやるに都合のよいところで あると思つたので その家を訪れた 誰も出て来ないから かまわず障子を開けて畳の上で ころがり休んだことがある 後から考えてみるとそれは村の 避病院であつた」 と笑い顔して言つた 路ばたで鶯が鳴いていた 「あの鶯の鳴き方はうちの八百屋の 小僧が自転車にのりながらまねする 鶯の声より下手だ」 不動も詣らず帰つた 鶉の鳴く日の如く淋しかつた九七 風は庭もめぐり 黄色いまがつた梨を ゆすり 小さい窓からはいつて 燈火を消すことがあつた九八 露にしめる 黒い石のひややかに 夏の夜明九九 ゴブラン織の淋しさ ゴブラン織に織られた 裸の女の淋しさ一〇〇 垣根の 春の 淋しさ一〇一 水色の葡萄のさがる町 この郷人の細工 この三寸の象牙 はずかしい思いで彫む 裸の女は皆お湯にちなむ しまだの女化粧道具を入れた 籠をさげる この水鳥 この銭湯の|曼陀羅《まんだら》一〇二 草の実の ころがる 水たまりに うつる 枯れ茎のまがり 淋しき人の去る一〇三 庭の |蝉殻《せみがら》の 夏の夜の殻の朝 悲し一〇四 八月の末にはもう すすきの穂が山々に 銀髪をくしけずる 岩間から黄金にまがる 女郎花我が国土の道しるべ 故郷に旅人は急ぐ一〇五 虫の鳴く声 平原にみなぎる 星もなく夜もなき 生命のつなぎに急ぐ この短い永劫の秋に 岩片にひとり立ちて このつきせぬ野辺を 聴く心の悲しき一〇六 さびれ行く穀物の上 哀れなるはりつけの男 ゴッホの自画像の麦わら帽子に 青いシャツを着て 吊られさがるエッケホモー 生命の暮色が つきさされている ここに人間は何ものかを 言わんとしている一〇七 なでしこの花の模様のついた のれんの下から見える 庭の石 庭下駄のくつがえる 何人もいない 何事かある一〇八 むくの実が坂に降る頃 ゴブラン織をあけて かなしげなる窓を開いて ぼけた遠山の方へ飛ぶ水鳥 渡し守りの煙草を吸うのを 眺めていると 昔読んだ小説の人々が生霊 の如くやつてくる 一緒になりまた別れる 悪霊を避けよ 苦しき立場 レモン畑 かみそりの歯 猿女房 と次から次へとやつて来る その辺にいる本当の人間の方 が幽霊に見える一〇九 いろりに アカシヤの木をたいていた 老人の忘らるるとは一一〇 八月の末頃 海からあがり 或る町を歩いた プラタヌスの葉が 黄色く街路に落ちていた 旅役者がカフェの椅子に よりかかつて何も註文もせず 休んでいた 裏通りを歩いてみると 流行しだした模様入りのハンカチフを 売つていた チャプリンがかかつていた 仏蘭西で初めて仏蘭西語の小説を買つた 坂をのぼつて行くと 海がうすみどりに光つている カンナの花が咲いている家がある はいつてみると としまの女がだまつて メーテルリンクの「蜜蜂の巣の精神」とか いう本を読んでいた 何かまちがつているのではなかつたか 時間がなかつたので 馬車に乗つて帰つた ヴィーナスの頭のついた古銭を くれる約束した若いギリシャ人が |舎利《さり》の壺に|瞿麦《なでしこ》をたてたような 顔をして笑つた一一一 |橡《つるばみ》に |女《ひと》のひそむ 美しさ その粉の|苦《にが》き 人間の罪をあがなう はりつけの情念の苦き一一二 とき色の幻影 山のあざみに映る 永劫の流れ行く |透影《すきかげ》の淋しき 人のうつつ あまりにはるかなる この山影に この土のふくらみに ゆらぐ色一一三 あかのまんまの咲いている どろ路にふみ迷う 新しい神曲の始め一一四 くぬぎの葉二三枚 昔の恋人の幽霊 昔の光芒 一一五 西国の温泉にしようか 東国にしようかと考えた むぎわらやの人は遂に 修善寺にした あの人はよく宿へ遊びに 来てくれた 寺の鐘が鳴る時分 松の葉が金色に光る時分 ,mcm バッグ------------------------------------

    Posted 12 years ago #

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