「飲むんだったら、グラスを持ってらっしゃい」 彼女は、いった。従業員の誰かだと、思ったんだろう。 返事がないんで、彼女はふり向いた。「おや……」 一瞬、不思議そうな表情,TUMIトートバッグ。「あの……」 いいかけたあたしに、「ここは、〈くたびれ《オールド》アキコ〉の楽屋《がくや》よ」 逆光《ぎやつこう》の中で、目尻《めじり》が3ミリ、苦笑した。 ♪〈カントリー・ガール〉 ヒット中のバラードが、カー・ラジオから流れている。「飲む? お嬢《じよう》ちゃん」 彼女は、GORDONのボトルを、あたしにさし出した。黙って、うけとる。 彼女と並んで、ボンネットにもたれかかる。 やはり彼女は、あたしのことを、まるで気づいてない。 ふと、思えば。あたしだって、ママの顔が、わからない。 11年は、やっぱり、長い。5歳の記憶は、もう、虹《にじ》の彼方《かなた》だ。 ママが、家を出ていった翌日。パパは、ママの写真を焼き捨てちゃった。 その日から、ママの顔を知らずに、あたしは育ったことになる。 あたしは、ジンのキャップを回した。ひと口、ラッパ飲み。透明な香りが、ツンと鼻に抜ける。 ママは、レモンを、かじる,オークリー 激安。グラスのジンを、ひと口飲む。 フーッ、と息をついた。「夕方は、やっぱり、ジンねえ……」 ママの髪は、まっ黒だった。 背は、あまり高くない,オークリー サングラス 激安。あたしより、10センチは低い。 古い言葉でいうと、トランジスタ・グラマーなんだろう。 まだ、女としては、しっかり現役《げんえき》,オークリー フロッグスキン。 30代のまん中だから当然だけど、そんな雰囲気《ふんいき》が、全身に漂《ただよ》っていた。「ところで、お嬢《じよう》ちゃん」「ミッキーよ」 あたしがミッキーって呼ばれはじめたのは、10代になってからだ。ママは、知らないだろう。「そう。ミッキーか……ジンを1杯やりにきたの?」「まさか。用事よ」 アロハの胸ポケットから、SALEMを出した。1本、くわえる。 曲が、K《ケニー》・ロジャースに変わった。 ♪「〈魚雷亭〉が?」 とママ。「そんなことに……」 海をながめたまま、つぶやいた。 あたしは、わけを話し終わったところだった。 夕陽は、もう半分、水平線に沈没《ちんぼつ》してる,サングラス オークリー。 漁船《ぎよせん》だろうか。クルーザーだろうか。たそがれの海に、船のシルエットが、1つ。 空には、カモメが7、8羽、漂《ただよ》っている。「声がつぶれて唄《うた》えないのに、ダグじいさん、黙って100ドルのギャラをくれたことがあったわ」 とママ。 空に漂うカモメたち。船のマストに、とまっている2、3羽……。「このあたりを渡り歩いてる音楽屋にとっちゃ、ダグの店は、まるであの船よ」 K《ケニー》・ロジャースのバラードが、風に流れていく。「OK、わかったわ。あしたから〈魚雷亭〉で唄《うた》わせてもらう。ダグじいさんに、そう伝えて」「でも、この店との契約《けいやく》は?」 と、あたし。ズルそうな支配人の顔を、思い浮かべる。「まかせといて」 とママ。グラスのジンを、飲み干した。 ♪ 紙ヒコーキが、ステージに飛んでいく。ママの右手が、つかんだ。 それを投げた空軍の連中から、歓声《かんせい》が上がる。 紙ナプキンかなんかのヒコーキだろう。ママは、それをながめて、「さすが、空軍《エア・フオース》ね。航続距離《こうぞくきより》が長いわ」 といった。空軍のユニフォームが、ワッと、わく,mcmブランド。〈珊瑚天国《コーラル・ヘヴン》〉ママの、|2《ツー》ステージ目だ。 客席は、米兵たちでいっぱい。あたしは、カウンターでひとり、TEQUILA & TONICを飲んでいた。「それじゃ、基地に、ご帰還《きかん》よ」 ママは、紙ヒコーキに、色っぽくキス。空軍の兵隊たちの方へ、投げ返した。 ワッという歓声。------------------------------------
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ミッキーか……ジンを1杯やりにきたの
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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