。手紙の内容————三つ折りの古紙には見覚えのある文字。母の筆跡。「皆元さんを頼りなさい」聞き覚えのない後見人を過去から指名された。住所と電話番号が記されていた。【智】「このあたりは——」駅前から随分きた。駅のこちら側でも中心部から離れれば胡乱になる。様変わりして、人気も乏しくなる辺り。めったに来ない場所だけに土地勘も働かない。人やら獣やらゴミやらなにやら。入り交じった臭いに鼻が曲がる。廃ビル、空きビル、閉じたシャッター。うらぶれたというよりうち捨てられた都市区画。ここは街の残骸だ。南聡の制服は水面の油みたいに浮き上がる。とてもとても似合わない。手紙にあった「皆元」という名に覚えは無かった。母は頼れという。その人物が、我が子の助けをしてくれるという。助け、助力、意外な授かり物、後援——【智】「うっわー、なんとも怪しいよね……」眉に唾つける。そもそも差出人は誰なのか、どこからこの手紙が来たのか。疑問は山積みだ。それでもだ。困っているのを助けてくれるなら、今すぐ僕を助けて欲しい。何時でも困っている,chloe 財布 lily。どこでも困っている。さあさあ、すぐに。過剰な期待をしてもはじまらない。死んだ母のいわば遺言であるという————それだけの理由で連絡を取った。それが先週のお話。得にはならなくても、何らかのコネにはなるかもしれないと、その程度の計算は働かせた。【???】「皆元信悟でしたなら、亡くなっております」連絡先にかけた電話の返事は人生にまたひとつ教訓を与えてくれた。過度の希望は絶望の卵。【智】「亡くなって……」【???】「はい、もう何年も前に」【智】「その、それはどういう事情で……?」【???】「あなた、どちらさま?」疑り深そうな電話の主に、これ以上ないくらい胡散臭がられながら、深窓の令嬢的に根掘り葉掘りと問いただしてみた。このままのオチではあまりに空しい。ぶら下がったかいあってようやく聞き出したのは、縁者がいるということだった。おお、皆元さま。どうして貴方は皆元様なの——?悲恋に引き裂かれた恋人同士のように、教わった住所を求めて裏通りを右に左に。どんどん胡乱な方へと進んでいく。いよいよ活気が失われる。【智】「最近の株価は空前の下げ幅だっけ?」朝のメディアの空疎なあおりを反芻しながら、ビル脇の電柱にあるプレートとメモの住所を見比べる,coach 財布 ピンク。この辺りだ。背中を丸めて頭をたれた元気のないビルたちには、取り壊し予定が看板になってかけられていた。一面をまとめて均して、瓦礫の中から大きなものに新生させるというお知らせだ。【智】「それはそれとして、ホントにここなの?」住所のメモと現実を見比べる。どうみても廃ビルだ。色褪せたリノリウム、ひび割れたコンクリート、壁面の窓ガラスは半分がた割れており、かつては名付けられていたビルの名前はとっくに色褪せて読めない。例えるなら、人間よりもゾンビの方が似合うくらいだ。【智】「えーっと…………」ためらいと困惑。突っ立っているとこの制服は目立つ。物陰からの胡乱な視線にうなじが粟だった。これ見よがしに廃ビルを不法占拠している連中も、この辺りにはことかかない。割れたガラスの後ろから、傾いた看板の影から、裏路地に通じる薄汚れたビルの隙間から。サバンナのウサギになった気分がする。(…………いや〜ん)じっとしているのも不安で、ビルへと踏み込んだ。エレベーターは当たり前にご臨終していた。くすんだ色のロビーの奥に、目ざとく見つけた階段を上る,クロエ トートバッグ 新作。【智】「みなもとさん……?」フロアを昇る,coach 財布 人気。コンクリートの隙間をわたる夜風のような自分の足音が、とてつもなく怖い。恐る恐る声を出す。低くこもった残響にびびる。人の気配はないのに、段ボールや一斗缶で一杯の部屋があったりした。得体の知れないものを引き当てそうで、しかたなく黙って上を目指した。【智】(ひ〜ん……)半泣きだった。甘い言葉につられて来たのがそもそも失敗だ,coach財布レディース。早く帰った方がどう考えてもよさそうなのに、ここまで来てしまうと手ぶらで帰るのは悔しい。蟻地獄。ギャンブルで身を持ち崩す人たちは、こういう気分で道を踏み外すんだろうな、きっと。【智】「……皆元さん」こんな場所を住処にしているという、問題の人物は、どのような問題ある人格を抱えた人物なのだろう。まともではない。まともなわけがない。どうみても正規の物件とは思えない。一瞬で16通りの可能性を検討して、まとめて脳内イメージのゴミ箱へポイ。ただひたすらに、ろくな考えが浮かばなかった。どれか一つでも現実になったら、母の遺言を投げ捨てて、回れ右して家に帰りたくなること請け合いです。距離以上にくたびれて、一番上のフロアに到着する。うち捨てられた廊下には明かりも無くて、夜でもないのに暗がりが手招いている。廃ビルには空っぽの部屋が多い。扉もない。この階はその意味ではまだ生きていた。棺桶に片足突っ込んだ断末魔、みたいなものだけど。【智】「えーっと」端から順番に中をのぞく。壊れたドアのついた部屋を右回りでフロアを一巡り
相关的主题文章:
DavidCadogan.ca Forums » DavidCadogan.ca
12940_21
(1 post)-
Posted 12 years ago #
Reply
You must log in to post.