。「美濃一国を渡せ、とおおせありまするか」 と、庄九郎は苦笑した。「せめてそれほど頂ければ、皇室、公卿もずいぶんうるおいましょう。さればそなたに官位もくだされるはずです」「官位など、要りませぬな」 庄九郎の気持は、急に冷えた,coach 財布 激安。「いかほど官位があったところで、この戦国の世ではなんの突っぱりにもならぬ。関白の位をもらったところで、隣国の大軍が押しよせてくればそれまでのことでござる。武士は強き弓矢こそよけれ、官爵など無用のものでござりまするな」 と、庄九郎は押され気味だった陣容を立てなおし、逆襲しはじめた。「宮は、美濃一国の財富を、と申される。なるほど美濃一国を差しあげてもよろしゅうござる。しかし、武士にとって地所はわが五体の肉と同然。いまは差しあげられませぬ。他国を切りとってからのことでござるよ」「隣国の尾張をとってからですか」 と、香子は、なかなか地理にあかるい。「いやいや、たかが尾張一国をとっただけで美濃を差しあげようものなら、他の隣国から攻めほろぼされます」「では、近江《おうみ》も?」「なんの、天下六十四州を切り従え、四海に仇波《あだなみ》をたてさせなくしてから、ようやく御料として一国を差しあげられるか、というほどのものでございます。そうたやすくは、神仏いじりばかりなされておる皇室、公卿衆に利益はまわりませぬよ,coach 財布 新作。一国とはそれほど重いものでござりまする」「だから一村?」「それも、肉を削る思いで差しあげます」「よします」 と香子はいった。 庄九郎は、にわかに笑った。巣ごもりの山《やま》鳩《ばと》がおどろいて飛び立ったほどのけたたましい笑い声である。笑いおさめると、「よした。それがしも。——」 といった。「まず、一献」 と、庄九郎は青竹の酒器をとりあげ、香子のさかずきに注いだ,クロエ 二つ折り財布。「お干《ほ》しくだされ。それがしも頂戴《ちょうだい》する。もう、この一件、思いあきらめた。禅家では一《いち》期《ご》一《いち》会《え》と申す,chloe 財布 人気。普《ふ》天《てん》の下《もと》、人間は億千万人居りましょうとも、こうして言葉をかわしあうほどの縁を結ぶ相手は生涯《しょうがい》でわずかなものでござる。よほど前世の因縁が浅くなかったのでありましょう」 ぐっと干し、唇《くちびる》の滴《しずく》をぬぐってから、「そうではござらぬか、宮。あなた様のおん前にいるのは、仏縁によってここに湧出《ゆうしゅつ》したるただの男」 と言葉を切り、さらに酒を満たし、「わが前にいるあなた様は、これまた逢《あ》いがたきみほとけの縁によりてこの山に湧出したるただのおんな」 ぐらっと体がゆれた。「そのただの女と男とが、ふしぎな縁で酒を汲《く》みかわした、ということでこのたびはお別れしましょう,クロエ トートバッグ 新作。されば縁の尊きを思うべし、思うなれば、歓をつくすべし」 酔っぱらってはいる。しかし庄九郎の酔態というのは、わるいものではない。土岐頼芸が庄九郎に魅了されたのも、ひとつはこの酔態であった。声に涼やかな風韻があり、酔語は巧まずして詞華を織り、ときに唄《うた》いときに舞えば都の名流といえども及ばぬような芸をみせる。「舞いましょう」 と、庄九郎は、よろりと立ちあがった。「されば、敦盛《あつもり》を。——」 ゆったりと舞いはじめた。 うた《・・》は、ない、鳴物もない。 が、どこかからそれらが聞こえてくるような舞いかたである。 香子はつい惹《ひ》きこまれて、庄九郎のためにうたった。はじめは低くかすかに口ずさんでいたが、やがて興が憑《の》ってきたのか、鈴が高鳴るようにうたいはじめた。 庄九郎は舞う。羽毛が風に乗るような軽やかな手ぶりである。 すでに、あたりは暗い。 かがり火は、林の上の星空を焦《こ》がさんばかりにして火の粉をふきあげて燃えている。 庄九郎の下人たちは、すでに、二人消え、三人消え、して、いまは一団の火炎とふたりしかこの山にはいない。 舞いおわって、庄九郎は茶筵に崩れた。「酔うた」 と、星を見あげた。「宮も舞われよ。それがしが歌おうず」「それならば、わたくしは羽衣をつかまつりましょう」 と香子はするすると立ち、これもみごとに舞いはじめた。 曲舞《くせまい》である。 地に堕《お》ちた天女が、ふたたびとはもどれぬ天をなつかしみ、「天《あま》の原ふりさけみれば霞《かずみ》立《た》つ」とはるかな天を見あげる風情は、尋常な様子ではない。 ——住みなれし空にいつしか行く雲の,coach 財布 ピンク。 と、香子は雲をもうらやむふり《・・》をみせ、みずからを羽衣をとられて天に帰れぬ三保の松原の天人になぞらえている様子である。(ほう、これは) うたいながら、庄九郎は思った。(美濃にくだる、という謎《なぞ》か) やがて舞いおさめて席にもどろうとしたとき、庄九郎は立った。「ワキをつとめましょう」 と、羽衣を奪った漁夫の役をつとめはじめた。香子はさらに舞う。 ときに、おどけた。存外、おどけごころのある娘らしい。 トン、と香子が拍子をとったとき、庄九郎は不意に抱きすくめた
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1261_7
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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