「良子、うれしくて眠れないのか」 今日、函館の母から、上富良野に着く日を知らせて来たのだ。「五月二十九日、こちらを発つことに決めました。本当は、三十一日までご奉公しなければなりませんけれど、二日早く帰ってよいと、お許しが出ました。三十日は日曜日なので、耕作も学校は休みでしょうから、旭川まで迎えに来てくれることが、できるでしょう。あと幾日かで皆さんにお会いできると思うと、夜もろくろく眠られません,ヴィトン 長財布。まだ四つだった良子が、もう十五なんですね。良子、髪の毛は長くなりましたか。帰ったら、先ずおばあちゃんの髪を結い、良子の髪を結おうと、楽しみにしています」 多分その文面を、良子は思い返して眠られないのだろうと、耕作は思った,ルイヴィトン 財布 モノグラム 三つ折り。 良子は母に髪を梳《す》いてもらった記憶など、全くないにちがいない。髪が伸びると、拓一がいつも握り鋏《ばさみ》で、オカッパに切り揃《そろ》えてやっていた。まだ馴れない頃、拓一は、「右が少し長いと思って切りゃ、左が長くなるし、揃えるつもりで左を切りゃ、右が長くなる」 と言って、右を切り左を切り、とてつもなく短くしてしまったことを耕作は思い出す。この辺の農家の子は、わざわざ市街の床屋まで散髪に行くなどということはなかった。それは大抵母親の仕事だった。その母親の代わりを、拓一はずいぶん努めて来たのだ。薪《まき》ざっぽうを人形代わりにしている良子に、人形を彫ってやったこともあるし、草履や藁《わら》靴《ぐつ》を造ってやるのはいつものことだった。 そんなわけで良子は、佐枝が髪を結ってやると言って来たことが、どれほどうれしかったかわからない。そう思いながら床の上に起き上がっている良子の黒い影を耕作はいとしげに見た。「ねえ、耕兄ちゃん。母ちゃんて、どんな顔してる? 写真とおんなじ?」 洋服を着た婦人宣教師と写した佐枝の写真が、二度ほど送られて来たことがある。一度目の写真は、頬がこけ、目が落ちくぼんで別人のようにやつれていた。だがこの間送って来た写真は、頬もふっくらとして、耕作の記憶にある母より美しかった。「うん、まあな。とにかく良子は母さん似だ」「そうお」 良子はうれしそうに言い、「母ちゃん、やさしい?」 その時、寝ていると思った拓一が、不意に言った。「やさしいも、なんも……誰よりやさしいさ」「ふーん、早く会いたいなあ。今度の日曜日は、今頃その新しい部屋に、母さん寝てるんだね」「寝てるとも。そうだ、良子もおれたちと一緒に、旭川まで迎えに行くべ。な耕作」「ほんと!? ほんと! 兄ちゃん。うれしいっ!」 ばたんと音を立てて、布団の上に倒れ、すぐまた起き上がって、「うれしいわあ」 と涙ぐんだ,coach 財布 アウトレット。「だから、もう早く寝れ」「うん、寝る」 素直に良子は横になった。が、「母ちゃん、今頃眠られんわね。もっと早く帰って来ればよかったのに」 良子はやはり寝つけないようだった。「雨がひどくなってくるな」 拓一は、新屋の柾《まさ》屋根を打つ雨の音に、耳を傾けているようだった,オメガ シーマスターアクアテラ。「明日、畠《はたけ》は休みかな」 耕作も雨の音が気になった,coach 財布 新作。「また福子が帰ってるってな」 しばらくして、ぽつりと拓一が言った。「そうかい、やっぱり小父さん悪いのかな」「ああ、あしたあたり、お前も早く帰って見舞いに行ったらいいな。後二、三日持つか持たないかだって、言ってたぞ」「国男ちゃん、軍隊から帰って来れるのかな」「軍隊だって、親の死に目には会わせてくれるだろう。戦場じゃないからな」「早く帰って来れるといいな」 二人は黙った。 福子がこの沢に帰って来ている。そう思っただけで、耕作の胸は疼《うず》いた。自分と同じ疼きを、兄も感じているのだと思うと、耕作は何か罪を犯しているような気がした。(福子は、兄ちゃんのもんだ) どんなに福子が好きでも、その想いは口に出すまいと、耕作は寝返りを打った。いつしか寝入った良子の健康な寝息が、ひどく愛らしく思われた。二「気をつけて帰れよ。今日は雨がひどいからな」 耕作は、いつものように玄関まで出て、生徒たちを見送りながら言う。生徒たちは、マントを着たり、傘をさしたりして、次々に雨の中に飛び出して行く。「先生、さようなら」「先生、さよなら」 泥を背中まで蹴《け》り上げ、筆入れの音をカタカタさせて走って行く,oakley サングラス 激安。雨雲が低く垂れ、十勝岳も雲の中だ。変に陰気に暗い日だ。教科書を小脇に抱えた耕作は、生徒たちが校門を出て行くのを見届けてから、職員室に戻ろうとした。と、廊下の板壁に背を押しつけるようにして坂森五郎が立っていた。「何だ五郎、まだいたのか。どうした?」 雨具がないのかと思ったが、ちゃんとマントを足もとに置いている。五郎はちらりと耕作を見上げてからニヤッと笑って、「あんな先生、先生雨降りの日は、畠さ出ないもな」「ああ、こんな雨降りじゃ、畠仕事は休みだな」 耕作が言うと、五郎はこっくりうなずいてマントを着、「先生、さいなら」 -------------------------
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そう思っただけで、耕作の胸は疼《うず》いた
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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