ありゃァ白い波がしらなんか立てちゃって、一人前の波らしい顔をしているが、ほんとうの波じゃない。岩や堤防の間から、いまの先、生まれて来たほんの子供のような波なんだ」 と言いながら、ぼくはふと逃げ遅れてころげて行った、あのちっちゃな女の子を思いだしました。ちょうどあのとき、あの女の子が逃げのびると急に元気になって、ぼくたちを囃したように、その川波も得意になって、大きな幹々を縫い、この松林の中まで走って来るようにみえるのです,オメガ メンズ 時計。「でも、もう冬の用意をするんでしょうね。みんなが拾うもんだから、うっかりするとなくなっちゃうのよ」「飛ばされるよ、しかし……」「小枝ごと、でしょう? いいの。飛ばされたら、鴎になって飛んじゃうから」「しかたがない。海のほうに出て、流木でも拾おうか、風浪にさらされて骨髄のようになったのを……」「あんなのを使うと、塩気で鍋釜が痛むと言ってたわ、家主のおばさんが……」「鍋釜ぐらい、いいじゃないか」 しかし、高い疎らな松林がだんだん低い松林に変わって来ると、波音はかえって遠のいたように静かになり、れいの砂山がシンとして、青空に弧を描いています。「あのへんだったかしら。アロハを着た白髪の老外人が、ズックの椅子に掛けて、聖書を読んでいたのは……」 思いだしたように、女房はそんなことを言うのですが、風はなにもかも砂で埋めてしまうかと思うと、|へんなもの《ヽヽヽヽヽ》を浮き上がらせて来るのです。「人のだか犬のだか知らないが、踏まないように気をつけないといけないよ」 強いというより大きな風──と言ったほうがいいかもしれません──に、いちめんの白波が|しぶき《ヽヽヽ》の霧を這わせています,oakley メガネ。しかも、白波は白波の形のまま、|しぶき《ヽヽヽ》の霧は海づらを這う姿のまま止まっているように思える。ハッとして立ち止まると、「鴎になった!」 そんな声がして、両手をひろげてムギワラ帽を飛ばしながら、砂丘を駆け降りて行くのです。とたんに、もの凄い潮騒の音がして、白波も|しぶき《ヽヽヽ》の霧も動きはじめました。飛ばした女房のムギワラ帽を拾って、ぼくも砂浜に降りると、女房は鴎になったでしょう? というようにニコリとして、「ほらね」「ほらね、じゃないよ。鴎だって、神社の境内に逃げたじゃないか」「鴎なら戻ってるじゃないの、堤防のあたりに」「堤防のあたりに?」 飛んでる、飛んでる! それはまた別の群れかもしれないが、まるで神社の境内にいたのが戻ってでも来ていたように、大きな風に流されながらも、堤防のあたりに無数の鴎が飛び交っているのです。「でも、ムギワラ帽はもう飛ばさないわ」「そうだ。鴎もいいが、紐ぐらいシッカリ結んどかなきゃァ」 そう言うと女房は笑って、赤いリボンのあご紐を結ぶのですが、ムギワラ帽はたちまち風にとられて首のうしろになり、髪をなびかせているのです。「すばらしいわね」「なにが、すばらしいんだい。ただ、白波と|しぶき《ヽヽヽ》の霧があるばかりじゃないか」 ぼくももう首のうしろになっているムギワラ帽に危なげを感じ、かえって紐をといて、手に持たずにはいられなくなりました。あんなにも美しく海をつなぎとめていた飛島も、解き放たれた海の白波としてひろがる扇形の要《かなめ》として、僅かにあるべき位置を偲ばすばかりでありません。それを受けて果てもなく腕をひろげて延びているはずの砂丘まで、|しぶき《ヽヽヽ》の霧にところどころ隠されてい、人けのない砂浜には、だれかがすでに集めて行った流木が、点々と骨髄の山のように積み上げられているのです。「でも、すばらしいじゃないの。荒涼として……」「荒涼として?」 おや、とぼくは思いました。それはたしかS君が、あのときに言ったことです。「ええ。Sさんもおっしゃってたじゃないの,coach 財布 アウトレット。こうしていられたら、楽しいでしょうねって。こんどいらっしゃったら、ほんとにまた飛島に行きましょうよ」「飛島に……」 あれから、S君からはなんの便りもないのです。いつもなんの前触れもなく、突然来るほどだから、それもかまわないが、帰ったら債権者会議を開いてもらうと言っていた。ひょっとすると、S君こそ飛島も見えぬ荒波と潮騒の、荒涼としたものを見入っているのかもしれません。「あのときは飛魚《とびうお》が飛んで、|おばこ丸《ヽヽヽヽ》の上甲板を越えて行くでしょう,クロエ トートバッグ 新作。わたし、はじめは燕かと思ったくらいだわ」 あのころ、ぼくたちはまだ酒田にいたのです。日ごろ念願にしていた飛島に行くというので、そんなことをしたこともない女房が、「いいかしら」などと言って、デパートからまっ白なスーツを買って来ました。それがうれしかったのでしょう、船が次第に揺れはじめ船酔いで萎れてしまうまでは、上甲板も舳先に近いブリッジの前に立って、頭上に飛び交う飛魚を声を上げて指さしたりしていたのです。「しかし、|うみねこ《ヽヽヽヽ》の群れた大きな岩が、いくつかあっただけで、低い松林の丘のほか、なにもなかったじゃないか」 いや、そればかりではありません。飛島にも外海《そとうみ》の吹きさらしにあたるほうには、るいるいと石の重なった賽《さい》ノ河原《かわら》と呼ばれる名所がある。さしかけの土産物屋や数軒の旅館らしいものの並んだ海岸にブラブラしているのも能がない。せめて、その賽ノ河原にでも行こうと思ったのですが道を失い、低い松林から上半身を現して客が来るので、訊こうとするとかえってこちらが訊かれるのです,オメガ 時計 人気。そのうち、女房が靴ずれで歩けないと言いだし、|おばこ丸《ヽヽヽヽ》が発たない前にと、なにも見ずじまいで戻ってしまったのです,ルイヴィトン 財布 モノグラム 三つ折り。その靴ずれでわかったのですが、女房はスーツを買ったのに気がねして、靴は安物のハイヒールにしていたのです。
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「でも、すばらしいじゃないの
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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