あの人が信者でないから、いけないっていうの?」(良一さんこそ、イエスさまの愛した幼子のような、きれいな気持ちの人だわ) めったに自分の考えを、父母に否定されたことのない奈緒実は、深くプライドを傷つけられた。「教会の人なら信用して、教会の外の人なら信用しないのね、おとうさん。神さまは善人にも悪人にも太陽を照らして下さるわ。たとえ良一さんが悪くても、悪い人ほど愛さなければいけないんじゃない? おとうさん」 奈緒実は、父母が良一に好感を抱かなかったことが、ふしぎでもあり、口惜しくもあった。 朝からの雪はまだ止まなかった。 良一が函館へ転任したのは、札幌の街にトウキビ焼きが、トウキビを焼いている頃であった。長いようで短い三カ月だったと、奈緒実は雪の降りつもっている庭を窓越しにながめながら、発《た》つ時の良一のことを考えていた。良一は、送りに来た新聞社の同僚や、絵の仲間たちには気の毒な程目をくれず、ほとんど奈緒実だけを食い入るようにみつめていた。その時のひたぶるな目の色を思い出すと、奈緒実は胸苦しいような甘い感情におそわれた。 良一は時々、函館から電文のような簡単な手紙をよこした,OAKLEY サングラス 店舗。「いま外は猛烈な風。ただ君にアイタイとのみ」 とか、「淋しい。さびしい。サビシイ。午前二時」 とか、そんな短い手紙を、良一は便箋一杯に大きな字で書きなぐってよこした。それを見ると奈緒実は、どんな長い手紙よりも真実がこもっているように思われてならなかった。そしていかにも良一が、絵以外では心の表現のできない不器用な人間に思われもしたが、良一自身が言うように、本当の天才かもしれないとも思うのだった。 斜めに降っていた雪が、いつの間にか止んだ。静かな土曜日の午後である。良一に手紙を書こうと便箋を開いた時、奈緒実の窓をコツコツと叩く音がした。目をあげると竹山だった。「あら!」 奈緒実は、思わずほおを赤らめた。便箋に書こうとした今の良一への思いを、竹山に見られたような恥ずかしさだった。急いで玄関に出ると、愛子も茶の間から出て来た。「まあ、すみません。お忙しいのにお呼びたてして」 どうやら、竹山は耕介に呼ばれてきた様子である。竹山が茶の間に入ると、耕介は珍しく、せっかちに話を切り出した。「早速ですがね、竹山先生。杉原良一君と言う青年は、先生の友人だそうですね」「杉原は、学生時代からの友人ですが……」 ちょっと尋ねたいことがあると言う耕介の電話を受けた時、竹山も良一のことではないかと察していた。竹山は何となく奈緒実の顔を見た。奈緒実は他人《ひと》ごとをきくような表情で林《りん》檎《ご》の皮をむいている,ヴィトン 財布 メンズ。「どんな人柄か、さしつかえがなければ伺いたいんですがね」「どんなって……」 竹山は、とっさに何と言ってよいかわからず口ごもった。「実は一度ちょっと会ったことはあるんですがね,coach 財布 激安。奈緒実がプロポーズされたそうなんですよ」 耕介の言葉を愛子が引きとって、「ところがね竹山先生、この問題で奈緒実と幾度か話し合っているんですけれど、どうも意見が合わないんですのよ。一昨日でしたかしら、奈緒実が『その人の友人を見れば、その人間がわかるっていうでしょう。おとうさんのほめている竹山先生は杉原さんのお友だちよ』と申しましたの。それで、はじめて先生のお友だちだとわかったものですから、わざわざ今日おいでいただいたのですのよ」 どうして今まで、奈緒実はそのことを親に話さなかったのか、ふしぎだった。が、それよりも、こうして今、耕介たちから直接相談される竹山の心は複雑だった。返事しかねる竹山を促すように耕介が言った。「どうでしょうな。先生は、杉原君と奈緒実の結婚はうまくいくと思いますかね」「さあ、馬には乗ってみよ、人には添って見よと言いますからね,ルイヴィトン 財布 レディース。予言はできませんよ」 竹山の言葉に奈緒実が微笑した。「先生、ずるいのね。うまく逃げること,ルイヴィトン ボストンバッグ。父も母も良一さんと言う人間を知りたがっているんですのに……」「わたしの友人ですから、どうせ、ろくなのはいませんが。しかし杉原の絵はかっていますよ」 女にはだらしがない。経済観念はゼロ,ヴィトン 長財布。その上大酒飲みだ。まあ止めておくんですねと正直に言えたなら、どんなにすっきりするだろう。たとえ、杉原を裏切ったことになっても、その方が奈緒実のためには無論、杉原のためにもいいことかもしれない。しかし竹山は口には出せなかった。「それだけですか」 愛子が言った。「それから」 竹山は考えこむような顔をした。竹山は、良一が奈緒実と結婚したいと言った時、なぜ、自分も実は奈緒実を愛しているのだと言わなかったのかと、今になって悔いていた。恋愛は、立ちおくれた者がひっこんでいなければならないという理由はないような気がした。スタートがおくれても、良一と堂々と競って悪いとは思えない。たとえ、良一に奈緒実の心が傾いているとしても、まだ決定的なものでないものなら、竹山も競争者として奈緒実の前に立ちたかった。そのためには、競争者の杉原を悪く言うことは控えねばならない。競うなら、フェアプレイでありたかった。 だまりこんだ竹山に愛子が尋ねた。「杉原さんは、女のお友だちは多い方ですか」「さあ……」 あいつより女友だちの多い男はめったにいない。
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神さまは善人にも悪人にも太陽を照らして下さるわ
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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