DavidCadogan.ca Forums » DavidCadogan.ca

それなのに、あなたはそれを踏みにじったんだ

(1 post)
  • Started 12 years ago by bper12mi

  1. bper12mi
    Member

    !」呪縛《じゅばく》から解放され、サーラは叫んだ。「やめて! そんなこと言っちゃだめだ! あなたはデルのお父さんじゃないか!」「父だからこそ、そう願うのだ。娘の苦しみを終わらせてやりたいんだ……」「そんなの、おかしいよ!」「いや、これが正しいのだ。このままでは、あの子はあの地獄の苦しみの記憶を背負ったまま、生き続けてゆかねばならない。私は解放してやりたいのだ。あの子もきっとそれを望んでいる……」「違う!」サーラは強くかぶりを振った。「間違《まちが》ってるよ! デルはそんなこと望んでなんかいない!」「何だと?」「だってそうでしょ? 彼女は四年間も生き続けてきたんだよ! もし死にたいと思っていたなら、とっくに死んでるはずじゃないか!」「だが、あの子はずっと苦しみ続けてきた——」「そう、彼女は苦しんできたよ。ものすごく苦しんできたよ。僕なんかには想像もつかないほど——でも、それはみんなあなたのせいなんだ、バルティスさん!」 バルティスは動揺した。「私のせい……!?」「そうだよ。思い出してみて。彼女がひと言でも、あなたに『生きていたくない』って言った? 『殺して』って頼んだ?」「それは……」「そうでしょ? 彼女は生きていたかったんだ。どんなに苦しくても、殺して欲しくなんかなかったんだ。彼女、僕に言ったよ。『どんな苦しい目に遭《あ》っても、死ぬよりはまし』だって……分かる? それが彼女の気持ちだったんだよ! それなのに、あなたはそれを踏みにじったんだ!」「だ……黙れ!」バルティスはひどくうろたえ、怒鳴《どな》りちらした。「お前みたいな子供に何が分かる!」「分かるよ!」サーラは怒鳴り返した。「子供だから[#「子供だから」に傍点]分かるよ! デルの気持ちがよく分かるよ!」「何……?」「彼女はあなたに『助けて、お父さん』って言ったんでしょ? 最後の最後まで、『助けて』って言ってたんでしょ? それが彼女の本心だったんだよ! どんなに苦しくても、最後にはきっと父親が助けてくれる——そう信じてたんだよ。あなたを心から頼りにしてたから、苦しみに耐えてたんだよ!」 怒鳴っているうち、とめどなく涙が出てきた。悔《くや》しさの涙、怒りの涙、悲しみの涙——こんなに激しく泣いたことはなかった。これまで生きてきて、こんなにも激しい感情の高ぶりを経験したことはなかった。「それをあなたは裏切ったんだ! 彼女を抱きしめて『だいじょうぶだ、しっかりしろ』って言ってあげれば良かったのに、そうしてあげなかった! それどころか殺そうとしたんだ! デルがかわいそうだよ! この世でいちばん信じていた父親に裏切られて、彼女は何も信じられなくなった! それで心を閉ざしちゃったんだ!」「違う! 違う! 違う!」バルティスは頭をかかえ、激しくわめいた。「私は——私はあの子のためを思って……!」「嘘《うそ》だ! あなたは彼女のためなんか思ってない!」「何だと!?」「あなたは自分のために[#「自分のために」に傍点]デルを殺そうとしたんだ! 彼女が苦しんでる姿を見たくないから、彼女の声を聞きたくないから、殺そうとしたんだ! 自分が苦しみから逃げるために殺そうとしたんだ! 彼女を苦しみから救いたかったなんて嘘だ! 本当に父親なら、自分の子供が好きなら、そんなことするわけないじゃない!」「そんな……そんなことが……」バルティスは愕然《がくぜん》となった。「私が……私が自分の心を欺《あざむ》いていたと言うのか? あの子を苦しめていたのは私だと言うのか……?」「そうだよ。僕に分かるぐらいだもん。デルだってきっと、あなたの本心ぐらい見通してたよ。だからあんなに苦しんでたんだ! 四年間もずっと、誰にも言うことができずに、一人で苦しんでたんだ!」「あの子が……私も気づかなかった……私の本心を……?」 バルティスの亡霊は、顔を覆《おお》い、子供のようにすすり泣いた。「何ということだ。あの子を苦しめていたのは私だったのか? みんな私が悪かったというのか……?」「みんなあなたのせいとは思わないけど……でも、あなたに裏切られなかったら、デルの心の傷はもっと浅かったと思うよ」 言い過ぎただろうか、とサーラは思った。バルティスは宙に浮かび、顔を覆ったまま泣き続けている。 もう恐ろしいとは思わなかった。、怒りと悔しさのありったけをぶちまけたので、憎しみも感じなかった。ただ、この男に対する憐《あわ》れみだけが残った——英雄と呼ばれる人でさえ、こんなにももろいものなのか。人間は耐えがたい苦しみの前では、愛も自尊心もかなぐり捨ててしまうものなのだろうか……?「……ねえ、バルティスさん。デルを助けてあげて」「何を今さら……」バルティスはすすり泣きながら言った。「もう手後れだ……私に何をしろというのだ……」「違うよ。まだ手遅れじゃない。今からでもデルを救えるよ」 バルティスは顔を上げた。「何……何のことだ?」「彼女はファラリスに入信しようとしてるんだ。あなたに裏切られて、人間がみんな信じられなくなって……そこをジェノアにつけこまれたんだ。ジェノアは彼女を手先にしようとしてるんだよ」「デルが……ファラリスに……?」「そうだよ。僕がいくら言ってもだめなんだ。彼女を救えるのはあなたしかいないんだよ。あなたが彼女に謝《あやま》れば……『殺そうとしたのは間違《まちが》いだった。生きてくれ』って言えば、彼女は考え直すと思うんだ」「本当に?……そんなことで、あの子は私を許してくれるだろうか……?」 バルティスはとまどい、自信が持てない様子だった。デルと顔を合わせることを恐れているのかもしれない。サーラは苛立《いらだ》った。「他に方法がないじゃないか! あなた以外の誰が、彼女の心を変えることができるって言うの!?」「しかし、私は……」「もう儀式ははじまってるんだよ
    相关的主题文章:

    Posted 12 years ago #

RSS feed for this topic

Reply

You must log in to post.