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「連れだすな

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  • Started 12 years ago by h41734hm

  1. リツ子の母が、もうねだっているのである。それにしても私が言葉にする必要のないのが有難かった。静子が太郎を負うと云ってきかないから、私はその背負子と太郎を換えた。「太郎ちゃん。お弁当を沢山つくりましたとよ。そうやった。ユデ卵ば一つ上げようか?」「タマゴ? タマゴ?」 と太郎が有頂天になっている,ルイヴィトン モノグラム 財布。静子は私が肩にした背負子の中の風呂敷包から一つ卵を取り出して、半分むいてそれを太郎ににぎらせた。 一度谷に降り、せせらぎに添うて、道を上ってゆくのである。細いながら、水は落ちたり淀《よど》んだり、顕《あらわ》れたり隠れたりしながら、その光の断続につれて潺湲《せんかん》の音は絶え間なかった。渓流のほとりの芝に土筆《つくし》が出さかっていた。「喜びなさすが——」 静子は何度もそれを繰りかえしている。私はむしろ恐縮しているのである。「何か土産でも持ってくればよかったな」「要りますもんか。そげなことをしなさしゃ、可也さんが却《かえ》って困んなさすが」 静子の云うがままに従うよりほかに、今は何の手だてもない。谷を渡ってしきりに小鳥が啼《な》いていた,coach 財布 アウトレット。 峠に近づくあたりちょっと息苦しい坂だと喘《あえ》いだが、すぐ広闊《こうかつ》な見晴しに出て、ちょっと立留るのである。真下が桜井だが、月谷はあの山の蔭だあす、と静子が指さした。桜井といえば俳句のZ氏が疎開していると聞いている。小田より温いのか、とその春陽射《はるひざし》を一杯に吸いこんだような明るい盆地の起伏を見た。もう桃の花が開いている,coach財布レディース。私はポケットの煙草を指に採って、一服、その煙が盆地の方に流れてゆくのを楽しむのである。 また少し降り、また少し登ったところに、赭土《あかつち》の切通しがあって、そこを抜けると、狭くて深い盆地だった。細長く、裂けた感じである。斜面にはどの幹も葡萄の肌が焼かれていた。「あの家だあす」 静子が指さしているのは左斜面の底に孤立した萱葺《かやぶき》の家だった。深い軒庇《のきびさし》に白く点々と谷川の大きい丸石が積まれてある。地形の複雑さからだろう、部落の家は一軒一軒、高低も、向も、形も変っていた。見えている限りではせいぜい二三十戸ぐらいのものだろう。「信仰が違うというてよそのものと縁組ばしまっせんけん、ここの月谷は、部落中がみんな親類ばっかりだす」 そうだろう。こんな狭いところで孤立したままの縁組を結んでいたら、近親をめとる以外にないではないか。 太郎をおろしてもらって手を曳《ひ》いた。手をつなぐ時だけはいつも遠慮して静子は一歩すざるのである,ルイヴィトン 財布 モノグラム 三つ折り。負うている時は側近く並ぶのに、その勝手な処女のはにかみが面白かった。「面白ござすとよ、さん。月谷の娘衆はだすな、お嫁入前にはきっとよその村へ泊りがけで歩きに行きますと」 そうだろう。ここに生れ、ここに死ぬ。黙々とした一生は私なぞに想像も及ばないことだ。男はこれまで、まだ兵隊に行くということがあったろう。女は嫁入り前に一生に一度ぐらいは他部落へでもとまりにゆかねば気が晴れまい。「千鶴ちゃんは、私のところへ来なさした」「そう。どうしてお宅と親しいの」「おじいちゃんがアメリカで知り合うとりますと」 なるほどそうかと曲り折れの道を降《くだ》っていった。「可也さんもーし」「可也さんもーし」 静子が二度云うと足踏み臼《うす》の音がちょっとやんで、「だれだすな,coach 財布 激安?」 柔い、低い声である。声につれて鵞鳥《がちよう》が、奥の方から物珍らしげにガアガアと群れて出た。「小田の北崎だーす」「ああ、北崎さんな。這入《はい》んなさっせ」 またゆるい搗《つ》き臼の音がはじまった,ルイヴィトン ショルダーバッグ。「連れのありますが」 静子はそう云ったが、低くて聞きとれなかったのだろう、答えはない。「這入りまっしょう」 静子が太郎の手を曳いて私にも眼配せした。暗い。広い土間を越え、奥の土間に、足踏みの台へあがって、半白の老人が米を搗いていた。向うの壁にガラスの小さい窓があって、光は逆に流れているから、老人のこちら側の表情は見えないのである。足を踏みながら今先まで読んでいたのだろう、古風な大型の聖書を、足をやめるのと一緒に、左手でつかまっている横木の上に、そっと置いた。そのままこちらを向く。「連れだすな?」 予期しなかったようだった。静かに台から降りるのである。「よう来なさした。北崎さん、ここはむさくろしいけん、食堂に案内してやんなっせ。悦二郎は野良《のら》だあす」 土間から折れたところに、同じく土間だが手づくりらしい素朴で頑丈《がんじよう》な食卓と椅子が置かれてあった。壁に「天主」の文字が掛けられ、讃美歌《さんびか》や聖書の類が隅《すみ》の棚《たな》に積まれてある。ここは朝夕の祈祷所《きとうしよ》をでも兼ねているのだろう。渡来物《とらいもの》のような頑丈な鉄製の燭台《しよくだい》も見えていた。「掛けなっせん?」 静子の声に肯《うなず》いて太郎と並んで腰をおろすと、何のつもりだろう老人は鵞鳥を抱いて入ってきた。左手で腹を支え右手でその頭のところを握っているが、ガアガアと喧《やかま》しい。「よう来なさした」
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    Posted 12 years ago #

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