まともな人間のやる仕事でないことを承知でやっているわけだから、そんな俺がまともであるはずはないのだ。しかし、それでも、警官なんていう商売からくらべれば、まあ、良心は痛まない。 また電話が鳴り、煙草をくわえながら受話器を取ると、知子の諦めたようなため息が聞こえてきた。俺は背中にいやな汗を感じながら、時間をかけて煙草に火をつけた。愚痴は言いたくないが、忙しいときに限って面倒な人間が電話をかけてくる。「あなた、今日がいく日だか、忘れたわけじゃないでしょう?」と、皮肉を言うときの癖で、静かに、ていねいに、知子が言った。「さっきテレビで豆を撒いていた,coach 財布 ピンク。節分が二月三日だということぐらい、俺だって覚えているさ」「それだけ覚えていて、加奈子とスキーに行ってから一ヵ月たったことは覚えていないのね」「もう、そんなにたったか」「そんなにたったかじゃないわよ。あなたのほうから連絡をよこす約束だったじゃない。わたしも暇を持て余しているわけじゃないのよ。明日から講演で四国に行かなくてはならないし、連絡が取れなくなるから仕方なく電話したの。加奈子だって最近はあなたに会うことを楽しみにしているのよ。この春には五年生だし、女の子って父親を意識する年頃なのよ」「理屈は、よく分からないけど、君が加奈子をまともに育ててくれていることには、いつも感謝している」「感謝なんかしてくれなくていいのよ。わたしは約束を守ってもらいたいの。あなたに父親の義務を果たしてもらいたいの,ルイヴィトン モノグラム 財布。それだけなのよ」「俺もそのつもりではいるんだが、仕事が片づかなくて、うっかりしてしまった」「うっかりして済む問題と済まない問題があるでしょう? あなたは一人でふらふら生きて楽しいでしょうけど、わたしには加奈子を一人前に育てる責任があるのよ。本当なら半分はあなたの責任なのよ。そのことに今更文句は言わないけど、でも月に一度加奈子に会う約束ぐらいは守ってちょうだいよ。男の人には分からないでしょうけど、加奈子の歳って、女の子にとって一番難しい年頃なのよ」「君、最近、疲れていないか」「わたしが……なんのこと?」「いつだったか、テレビで、君が老人問題の討論会に出たのを見た。少し痩せたようだし、元気もないように見えた」「あなた、あれを、見てくれたの」「君が大変なのは分かる。頑張って仕事をしているのも分かる。だけど、あまり、無理はするなよな」「このところテレビや講演が重なって、たしかにね、少し疲れているかも知れないわ」「四国は、どれぐらい行ってるんだ?」「二日間」「君が帰ってきたら、俺のほうから連絡するよ。俺だって約束を忘れたわけじゃない。加奈子のことを考えていないわけでもない。たまたま、本当に、仕事が重なっていただけなんだ。これが片づけば時間ができる。たまには三人で食事でもしようじゃないか」「たまには、そうね、それもいいかも知れないわね」「三日後に電話をする。加奈子にもそう言ってくれ。それから君も、くれぐれも無理をしすぎないように」「あなた……」「うん?」「いえ、なんでもないわ。それじゃ間ちがいなく、三日後に電話をちょうだいね」「間ちがいなく、連絡する。加奈子と君のお袋さんに、よろしく言ってくれ」 知子がそれ以上なにか言わないうちに、俺は電話を切らせてもらい、椅子の中で背中を伸ばして、火がついたままの煙草を灰皿に放りなげた,オメガ デ ヴィル。たまたま知子が出たテレビを見ていたからいいようなものの、あれを見ていなかったら、知子の攻撃はあと三十分はつづいたろう。売りだし中の社会評論家だけあって、理屈を言い合ったら一年かかっても俺の適《かな》う相手ではないのだ。それにしても、俺も忘れていたが、正月に加奈子とスキーに行ってからもう一ヵ月がたっているのか,ルイヴィトン 財布 モノグラム 二つ折り。 なんでこんなに電話がかかるのか。俺が新しい煙草に火をつけ、音のないテレビでバラエティーショーを眺め始めたとき、電話が鳴って、聞いたことのない女の声が俺の名前を確認してきた。「わたし、早川ケイといいます。柚木さんとは一度だけお目にかかっています」 名前にも心当たりはなかったが、しっかりした口調で、一言の中に頭の良さと性格の素直さが感じられる、若い声の女だった。「お正月に草津のスキー場ですれ違いました。あとで叔母から、高校時代のお友達だとうかがいました」 俺自身、一度すれ違っただけの女を突然思い出す自分には感動した。草津のスキー場と聞いただけでもうはっきり女の顔を思い出したのだ。永井実可子のテーブルに近づいて、梨早という娘と一緒にレストランを出ていった、あの透明感のある目をした奇麗な女の子に違いない。女の子が『叔母』というからには、永井実可子の姪になるのだろう。しかしなんだって、そんな子が俺に電話をかけてくるのだ。「名前は知らなかったが、君の顔は覚えてる。黄色いスキースーツを着て頭にゴーグルを載せていた,オメガ メンズ 時計。卯月……いや、永井実可子さんの、姪御さん?」「永井の家に住んでいて、梨早ちゃんの家庭教師をしています。柚木さんに電話しようかどうか迷いましたけど、でも、思い切ってしてみました」「あのときすれ違って、俺に一目惚れしたわけか」「はい?」「冗談だ,aokley サングラス 通販。気にしないでくれ」「わたし、四日間考えたんです」「俺のほうは一ヵ月間、ずっと君のことを考えていた」「柚木さん、酔っ払っていますか」「悪かった。仕事がはかどらなくて、ちょっと苛々してるんだ」「お邪魔でしたら、あとでかけ直します」「その必要はないさ。どうせテレビを見ながら煙草を吸ってるだけだ」「わたし、柚木さんにお会いしたいんです」「俺も……」「叔母のことはご存知ですよね」「永井実可子は、だから、高校の同級生だ」「それだけですか」「君の言ってることが、よく分からないな」「叔母が死んだことです。
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「名前は知らなかったが、君の顔は覚えてる
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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