中央弁護士会に所属している」「弁護士ということは、その眩《まぶ》しいバッジでわかりましたよ」 と、私は、少し皮肉をいってやった。「それで、どんなご用件ですか?」「私は、古山機械の顧問弁護士を長いことやってきた。古山機械は知っているだろうね?」「知っていますよ。資本金五億六千万円。各種自動販売機の専門メーカーとしては一流。前に一度、信用調査を頼まれてきたことがありますから、経理内容がしっかりしていることはよくわかっています」「信用調査をね。依頼人の名前は誰《だれ》かね?」「それはいえませんよ。古山機械の下請《したう》けになるかどうか迷っていた小さな町工場の主人です。続きを伺いましょうか?」「よろしい。社長の名前は、古山藤太郎《ふるやまとうたろう》だ。多分、それも知っているだろうね?」「年齢六十七歳。妻|由花子《ゆかこ》五十九歳。子供はなし。趣味は競馬。馬を六頭持ち、そのうち一頭がダービーに出場したことがある」「そのとおりだ。君は、記憶力もいいんだね」「それだけが取り柄のようなものでしてね」「実は、古山社長が十日前に亡くなられた」「そうですか」 私は、依頼されて、調べただけで、古山社長に会ってはいなかったが、そんなことでも、死んだとなると、一抹《いちまつ》の寂《さび》しさが心をよぎるのを覚えた。「奥さんがお悲しみでしょうな。確か、お子さんに恵まれなかったと覚えていますが」「悲しいことに、その奥さんも、ショックから二日後に亡くなられた」「それは、それは——」「困ったことに、ご夫婦とも揃《そろ》って身寄りがなかった,chloe 財布 リリィ。社長も、奥さんも今度の戦争で肉親を亡くされていてね。まあ、その孤独から、終戦直後に、結婚されたということもあるんだが」「なるほど、そうなると、遺産相続で問題が起きているということですか?」「そのとおりだ。会社のほうは、総株の五十二パーセントを社長夫妻が持っていたが、このほうは、差し当たって問題はない,ルイヴィトン 財布 モノグラム 三つ折り。現在、副社長の吉村《よしむら》氏が社長の代理をしている。業績は順調だからね,OAKLEY アウトレット。問題になるのは、個人資産のほうだ」「どのくらいあるんですか,ルイヴィトン 財布 モノグラム 二つ折り?」「大した額ではない、約八億九千万円にしか過ぎないからね」 確かに、今のインフレ時代では、腰を抜かすほどの大きな金額ではない。 だが、私の年収の少なくとも八十年分は楽にある,chloe 財布 2013。 2 松田弁護士は、二本目の葉巻に火をつけた。いい葉巻を吸っている。ハバナ葉巻だ。「ところで、古山社長は、事故死でね。突然の死だったために、遺言状もなかった。それで遺産が宙に迷ってしまった」「もったいない話ですね」「ところで、私は弁護士として、遺産問題を処置しなければならない。もし、相続人がいなければ、私の一存で、古山教育資金といったものを作って、恵まれない若者の役に立てたいと思っている。というのは、古山社長は、自分が若いときに苦学したので、その方面の関心が深かったからね。しかし、これはあくまでも、遺産相続人が一人もいなかったらのことだったがね」「だったというと、遺産相続人が見つかったわけですか?」「ああ見つかったよ」「それなら、なぜ、私の所へ来たんですか? 私に、遺産相続人を探《さが》してくれというのならわかりますがね」「これからくわしく、話すよ,coach 財布 アウトレット。君も知っているとおり、古山夫妻の間に子供はなかった。十五年前に養子を貰《もら》ったが、病死した。それ以来、夫人が二度と同じ悲しみを持ちたくないというので、養子を貰うことはしなかった。子供が出来ない理由は、どうやら、夫人のほうにあったと思われる」「なるほど。それで少しわかりかけてきましたよ」「何がだね?」 弁護士は、眼鏡《めがね》の奥から、じっと私を見つめた。私も、煙草《たばこ》を取り出して火をつけた。私のほうは、日本製のセブンスターだが。「古山社長のほうは、男としての能力があったということでしょう。とすると、当然、古山氏が、どこかに作った子供がいることが十分に考えられる。正式には、籍《せき》に入っていない子供が見つかったということじゃないですか?」「君は、なかなか頭がいい。気に入ったよ」「それはどうも。しかし、相続人が見つかったのに、私に何をしろというんですか?」「それを、これから、くわしく話すところだ。君の推理したとおり、古山社長は、なかなかの艶福家《えんぷくか》でね。仕事で日本中を飛び廻《まわ》っている間に、各地に好きな女が出来たらしいが、くわしくは私も知らん。ただ、事故死される前に、古山社長が、私に向って、そうした女性に子供を生ませたことがあるといわれた。そのときは、急逝《きゆうせい》されるとは考えていなかったから、その子供について、何も聞いていない。男か女か、いくつなのか、どこにいるのか、母親の名前が何というのかもだよ。私にわかったのは、古山氏の子供が、日本のどこかにいることだけだった。ただ、私は、全国紙に広告を出した。一週間たった。私の前に、古山社長の遺児だという人間が現われた。驚いたことに四人もだ」「そいつは豪勢ですね。八億九千万円あれば、四人が分けても二億円以上にはなる。もっとも、相続税でごっそり持っていかれるでしょうが、それでも、億単位の金額は確実ですからね」「そんな呑気《のんき》なことはいってられないんだ。古山社長は、私に、その子供のことで、性別も、年齢も、母親の名前もいわなかったが、一人しかいないということだけは聞いていたんだよ」「そいつは面白い」 と、私は、思わず、不謹慎《ふきんしん》な声を出した。案の定、松田弁護士は、渋い顔を作った。「私にとっては、面白いどころの話じゃない。
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子供はなし
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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