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「けど、こんな考え方をするのは天台宗だけなのよ

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  • Started 12 years ago by carlhmeznk

  1. carlhmeznk
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    「これお茶じゃないわよ、荼毘《だび》にふすの荼《だ》ね」 元来は同じ字であったのだが。「……あまりにも恐い神さまなので、最澄さんは、その荼吉尼天の秘法を比叡山の塔の下に埋めて、封じてしまったといわれてるぐらいなの……荼吉尼もインドにいたときはね、人間の心臓や肝臓を食べていたそうよ」「……そんなやつばっかりやんかあ」 泣きそうな声で土門くんはいう。「でもね、大日如来が大黒天に姿を変えて……大黒天は暗黒破壊神なんだから強いでしょう、そして荼吉尼を懲らしめたの。仏教に出てくる神さまって、だいたいこういうパターンなのよ、かつては魔物だったんだけど、仏法《ぶっぽう》によって改心するのね」「はっはーん、孫悟空と同じように頭に輪っかでもはめるんやな」「でも孫悟空は、たしか最後のシーンで輪っか外れなかったかしら?」「……いわれてみれば」「改心したから、輪っかがなくても暴《あば》れないのね。孫悟空は中国だけど、インドにも古来の神々がたっくさんいたのよ。その神々を信じている信者さんもいたわけね。だから物語を創って、その神々たちをうまーい具合に取り込んでいったの。これなら信者さんたちも、無理なく仏教に改宗できるでしょう、かつての神々を信じたままでいいんだから」「あ、賢いやり方やなあ……」 その賢いやり方を実践したのが仏教の開祖である釈迦なのであるが、彼は紀元前五世紀ごろに生きていた釈迦族の王様の子である。「でね、この荼吉尼天は、おもに真言宗の方が使っていた裏の神さまなの。だから、そのあたりの僧侶と天皇家とが親密で、即位の儀式に使われるようになったらしいのね」「……姫、なーんか重要なことが一個抜けてるでえ、それはいつ頃の話なんや?」「はっきりはしていないんだけど、だいたい後小松《ごこまつ》天皇の頃からだといわれてるわ」「それ、足利義満《あしかがよしみつ》が将軍してたときやんか、さすが意味深なところでやってるなあ……天皇位を奪われそうになってたときやから、地獄の神さんに祈りとうなる気持ちも、わっかるような気がするぞう」 しおらしいことを土門くんはいってから、「でや、それいつ頃までやってたん?」「はっきりと分かっているところでは、皇女和宮のお兄様までね」「うわあ……」 蕩《とろ》けたような顔をして、「……明治以降は、どないなったんでしょうかね」 小声で土門くんは尋ねる,ルイヴィトン モノグラム 財布。「国家神道《こっかしんとう》になってしまったから、たぶんやっていないと思うわ。でも関係はないでしょう、幕末まではやっていたんだから」「まあそうやな、そやけどもう一個、重大[#「重大」に傍点]な疑問があるぞう、それが慈覺大師のお地蔵さんとどう関係すんのん?」「それがね……」 まな美はちょっと不満そうに、「慈覺大師の摩多羅神と、荼吉尼天とが一緒だという話なんだけど、これはわたしの推理じゃないわよ。天台宗の僧侶が書いた本にそう説明されているの。摩多羅神はすなわち摩訶迦羅《まかきゃら》天にして、またこれ荼吉尼なり……てね」 まな美が引用したのは、光宗《こうじゅう》という天台の学僧が十四世紀に編述した『渓嵐拾葉集《けいらんしゅうようしゅう》』である。「えー、そやったらそのへんの暗黒街の神さん全部つながってしまうやんか」 整理すると、地蔵菩薩=閻魔天=泰山府君=摩多羅神=摩訶迦羅天(大黒天)=荼吉尼天となる。「けど、こんな考え方をするのは天台宗だけなのよ。それに、名前と故事が似ているから一緒、肝を食べるという連想から一緒、といちいち尤もらしい解説はされてるんだけど、これも後世のこじつけくさいのよ。この一緒《イコール》になる原因を作ってるのは、摩多羅神なのね,スピードマスター オメガ。だから何[#「何」に傍点]か裏があるんだと思うわ……」「慈覺大師が魔法でもかけたんちゃうのん」 土門くんが茶化していった。が、「うーん、そうかもしんない」 意外にもまな美は同意して、「——慈覺大師の術[#「術」に傍点]に、みんな嵌まってるのかもしれないわね,chloe 財布 新作。あの天海僧正が信者になるぐらいなんだから、究極の魔法だわよきっと」「ふむ……そうすっとやな、慈覺大師のお地蔵さんに菊の御紋を打った人も、その魔法に嵌まったいうわけかあ?」「そうなるわね」「……けど、そんな魔法まで使《つこ》て、神さん勝手に作ってええんか?」「だって、密教の表の顔の大日如来も、あれは作った[#「作った」に傍点]仏さまなのよ。それで皆が納得して拝んでるんでしょう,chloe 財布 人気。摩多羅神も、天台宗だけとはいえ皆が納得して拝んでるんだったら、それで了承《オッケイ》なんじゃない,chloe 財布 リリィ。お兄さんうまいこといってたわよ、神さまというのはね、どんな神さまでも、人が信じてくれてこその神さまなんだって。人が信じてくれなくなったら、その神さまは死ぬんだって……」「うわー、兄弟そろうて何てうまいこといいよるんや」 はしゃぐように土門くんはいってから、「——そやけどな、この話は文化祭ではあかんぞ」 急に真剣《マジ》な顔になっていう。「そうね、魔法じゃとおらないわよね、これはさらに詳しく調べてみるから」「そういう意味ちごて……岩住はけっこう物分かりのええ先生やけど、こんな内容までは許してくれへんいうことや。天皇さんが地獄神に祈ってて、その地獄神は人間の胆を食ろうてたあ、——あかん」「あかんかしら……」 少し甘えたようにまな美はいってから、「けど、もうひとつの方があるからいいわ」 凛《りん》とした声に戻っていう。「そやそや、三仏に換えて三神を置いたんやろ、あの話ほったらかしやもんな」「——これは凄いわよ土門くん,オメガ デ ヴィル。あの謎を解いたら、土門くん絶対にひっくりかえるから」「そうかあー、自分もうあんまり驚かへんぞう、このへん麻痺しかけてるからなあ……」 額のあたりを人差し指でとんとんと突突《つつ》きながら、土門くんはいった。[#改ページ] 22「——それで、その女子高生は?」 署に戻ってきて野村警部補と雑談していた依藤が、少し慌てていった。「篠原《しのはら》が今日は早上がりとかで、自分の車で送るとかいってたから、まだ彼女の車ん中でしょう」 篠原とは、さっき野村警部補に邪険に扱われていた婦警の名前である。「——連絡つく?」 依藤は植井に訊いた。「はい、携帯の番号が分かりますから」「だったら至急[#「至急」に傍点]呼び戻してくれる。勿論、その女子高生こみ[#「こみ」に傍点]で——」「どうしたんですか係長?」 依藤警部補のただならぬ様子に、野村警部補も真顔になって尋ねる。 依藤は辺りを一瞥《いちべつ》してから、小声で話し始めた。
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    Posted 12 years ago #

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