。どんな子ぉやったかいな」「ほら、展示会の時、来とったやろ」「ああ、はいはい、ああいう蓮《はす》っ葉《ぱ》なんと一回くらい付き合っといたら、王子様も一皮むけるやろ」「せやなぁ。しかしあの女はほら、『床上手』の顔やな、あれは」 思わずあたしは吹き出してしまう。 一郎くんも最初ちょっと困った顔をしたけど、あたしにつられて笑い出した,프라다 안경。 あたしは隣に聞こえないように応接室のテレビをつけてから、一郎くんに言った。「あの、きのうは無理矢理、上に乗ってしまって、大変失礼いたしました」「いえ、こちらこそ、お送りもしませんで。ちゃんと家まで帰りはったかな、て後んなって心配になりました」 あたしはびっくりして一郎くんの顔を見つめる。初めて聞く一郎くんの京都弁は、なかなか味わい深かった。少し照れた様子の一郎くんに、あたしは言う。「今後も公私共々、おつきあいいただけますでしょうか」「はい、もちろん。『鋭意交渉』継続してゆきましょう」「赤富士」の額を背に、一郎くんはにっこりと微笑んだ。 テレビのワイドショーでは、皇室の方々がテニスを楽しむ様子が映っている。あたしはいつも感心するのだけど、やんごとなきご身分の方たちは、テニスをする時でさえ朗らかな笑顔をくずさないので、とてもゆっくり動いているように見えて、実は結構速く走っているのだ,프라다 선글라스。 そう、穏やかに見えるからと言って、ガツガツしていないからと言って、走っていないと決めつけてはいけない。 王子様が王子様であり続けることは、はたから見てるよりもずっと根性のいることに違いない。 一郎くんは、汚点の許されない社会の中で、整然と配置されたブランドロゴのモノグラムの中にいる。 優しくも排他的な「リトルトウキョウ」的な世界で、一郎くんは、生きている。 リトルトウキョウの、王子様,프라다 스니커즈。 その夜、「床上手」なあたしは、一郎くんの健全な分身を、とびきりの愛情を込めて愛撫《あいぶ》した。一郎くんは、顎《あご》をのけぞらせて呻《うめ》き声をあげた。 一郎くんがあたしの中に優しく侵入してくる。あたしは体の中でその弾力を味わいながら、一郎くんの体に脚を絡めて、いっしょにリズムを刻みはじめる。 ふたりつながって一緒に揺れながら、あたしは考える。あたしはたぶん、一郎くんの前で「心のパンツ」を脱げない自分に苛立《いらだ》っていたのだ。人のことを値踏みする前に、あたしは自分自身がちょっと変わった「一点物」であることをしっかりと自覚しなければいけないと思う,www.wilmettedepot.com。 耳の上あたりがざわざわしだして、あたしは声をあげながら、一郎くんの背中に爪をたてた,프라다 벨트。 そう遠くない日に、別れはきっとやってくるのだろうけど、一郎くんがおじさんになった時、若気の至りでちょっと年上の蓮っ葉な女の子と付き合ったこともあった、というくもりなき青春の一ページになれば、それはそれで、すごく素敵なことだと思う。 それまでは、せっかくだから、恥ずかしい部分も見せあいっこして、ちょっぴり傷つきながら、素直にパンツを脱いで愛し合えばいい。 一郎くんは一郎くんのやり方で、丁寧に穏やかに、低温やけどみたいにあたしを焼いてくれるはずだ。 一郎くんはきっと、何回か海外赴任をこなした後、お父さんの会社を継ぐのだろう。落ち着いた色の高級国産車に乗って、助手席にはお上品な奥様が座っていて、うしろの座席にはチャイルドシートがあるかも知れない。ハンドルを握る一郎パパのワイシャツの袖口《そでぐち》には、図案化された美しいイニシャルの刺繍《ししゆう》がある。 そして、一郎くんの心の中に、規則正しく敷き詰められている美しいモノグラム──そこにこっそりひとつだけ、あたしのイニシャルを潜ませておいて欲しい。[#改ページ] 海ほおずき 夏はあたしのからだの一部分だった。 遠い夏の日。あたしは、あの夏の永遠の景色に溶け込んでいた。「秘密の場所」に、あたしは向かう。 頼りなげな細い手足は毎日太陽を浴びて、しだいに快活になってゆく。 水着の上にTシャツをひっかけただけの恰好《かつこう》で、自転車に乗ってゴム草履の足でペダルを踏む。あたしはあの入り江に向かっている。 長い桜並木を通りすぎて、海沿いの国道に出ると、とつぜん潮の匂いがやってきて、あたしを包む風が変わる。 波の音、松の枝がゆれる音、髪の毛と風が遊ぶ音、すべてがいっしょになって、あたしは夏のささやきのオーケストラの中にいる,프라다 핸드폰줄。「立ちこぎ」で上り坂をぐんぐん進む。坂を上りきって急な左カーブを越えると、右手には海がどこまでも遠く広がっている。ゆれる水面が、夏の太陽をはね返してきらきら輝いている。 海は、ずっと遠くで空と溶け合ってひとつになる。 大きな下り坂にさしかかると、一瞬、無重力空間に投げ出されたような感覚があって、あたしは漕《こ》ぐのをやめて前傾姿勢で坂を一気にすべり落ちていく。ものすごいスピードであたしは空気をやぶって飛んでいく。強い陽射し、海の輝き、空の青、松葉の緑、乾いた木肌、いろんな景色がぜんぶ混ざり合って、ものすごい速さであたしの横をすり抜けてゆく。風が、あたしを引き剥《は》がして去ってゆく。 秘密の場所に、あたしは向かう。 海のそばの北陸のいなか町で、あたしは子どもの頃の数年間を過ごした。 その辺りは豪雪地帯で、長い冬の間じゅう、大粒のぼたん雪が降り続いた。一晩で一メートル以上積もって、朝、玄関が開かないこともあった。物置の陰だとか、日当たりの悪いところには、五月の連休の頃になってもまだ雪が残っていた。 春や秋の過ごしやすい季節でも、この地方は曇天の日が多く、町はいつもけだるく湿っていた。「繊維をつくるのには一定の湿度が必要で、だからこの辺りでは繊維産業がさかんなのです」 と、社会の時間に先生が言っていた。 あたしの父は繊維メーカーに勤めていて、転勤になって家族でこの町に引っ越してきたのだった
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初めて聞く一郎くんの京都弁は、なかなか味わい深かった
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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