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パウラ、もう二度とこの色を忘れるな

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  • Started 12 years ago by fdsvrmhg

  1. 。機械室の方で爆発音が発して以来、船脚は格段に遅くなっている,aokley サングラス 通販。いよいよ限界か。額に滲んだ血と汗を一緒に拭ったフリッツは、しかしよくここまでもってくれたものだと、〈伊507〉の堅牢《けんろう》な船体にひそかに感謝した。 フランス海軍による元の造りがよかったのか、ナチスドイツが施した大改修がきいているのか,oakley メガネ。あるいは日本海軍の乗員たち——この〈伊507〉の乗員たちのあきらめの悪い性分が、こんなところでも発揮されているのか。いずれにせよ、テニアンを離れてもう十数分が経過した。そろそろマリアナ海溝の上に差しかかる頃合だ。どうやら自分で手を下す必要はなくなったと判じて、フリッツは射撃指揮所の壁に背中を預けた。本当は座り込みたかったが、直径二メートルの円筒形の中ではできない相談だった。 パウラや〈ナーバル〉がなくても、〈伊507〉に残った機器からローレライの原理を逆算し、模倣《もほう》することは決して不可能ではない。アメリカの国力と技術力なら、第二のパウラを作り出さないとも限らず、海底に没した〈伊507〉の回収にも金と手間を惜しまないだろう。二百メートルやそこらの深度に沈めた程度では安心できるものではなく、いざという時は主砲を暴発させて筒内爆発を引き起こし、艦に爆沈を促す腹づもりだったが、マリアナ海溝までたどり着ければ問題はない。五千メートルの厚みを持つ海水がカーテンになり、金属さえねじ曲げる水圧がすべてに片をつけてくれる。システムの機密がぎっしり詰まった船体も、このおれの体も。 目の前の砲座に座る田口は、正面の管制盤に頭を預けて眠っている。先刻まで切れ切れに漏らしていた歌声も途絶え、その背中はぴくりとも動かない。こんな狭い場所で寝ていられたらうっとうしい。言われた通り、頭をどやしつけて起こしてやろうかと思ったが、ひどく穏やかな寝顔を見ればそれもためらわれた。 への字の口もとをやわらげ、田口は満足げに微笑んでいた。すべてを赦《ゆる》し、また赦された人間の顔に見えた。薄く開いたその瞼を完全に閉じてやってから、フリッツは潜望鏡に似た照準スコープを覗いてみた,coach 財布 激安。ひび割れたレンズを通して、前部甲板からもうもうと噴き上がる黒煙と、その向こうに広がる青空を見ることができた。 陰影のない雲の筋を流して、空は驚くほど明るく、一色に塗りそろえられた青色は壁のようでありながら、その実どこまでも透き通っているのだった。こういう色だったか? あまりにも鮮明な青に戸惑い、フリッツは記憶の中にある空の色を思い浮かべようとした。曇り空の陰鬱な薄灰色や、ほとんど世界中を回った海の色はすぐに思い出せたが、晴れ渡った空の色はまったく思い出せなかった,ルイヴィトン 財布 モノグラム 二つ折り。昨日の記憶でさえ、残っているのは海の印象ばかりで、水平線から上はそこだけ靄《もや》のかかった空白だった。 私、征人に会ってから、忘れていたたくさんのことを思い出すことができた。太陽の眩《まぶ》しさや温かさ、雲の形、空の色。おばあちゃんが付けてくれたアツコって名前——。妹の声が記憶の桶《おけ》を緩慢にかき回し、そうだったなとフリッツは苦笑した。おれたちはずいぶんたくさんのことを忘れていた,ルイヴィトン モノグラム 財布。空とはこういう色だったんだ。パウラ、もう二度とこの色を忘れるな。この空の下で、大地に両足を着けて存分に生きろ。 おれたちを縛りつけるものは、もうなにもないのだから……。 照準スコープに映る青空がふっと陰り、ひび割れたレンズが粉微塵《こなみじん》に砕けた,クロエ トートバッグ 新作。直後に膨れ上がった炎の色を、フリッツ・シンヤ・エブナーは見なかった。 直撃を受けた二十・三センチ砲は、丸みを帯びた装甲板をはね飛ばして爆発し、射撃指揮所も炎と爆風に呑み込まれた。それは弾薬庫の誘爆も招き、左右の舷を引き裂いて炎の塊を吐き出した〈伊507〉は、ゆっくり沈没を開始した。[#ここから2字下げ]実を取りて 胸にあつれば新なり 流離の憂い[#ここで字下げ終わり] 主砲の爆発が艦底にまで届き、船体を支える竜骨《キール》を叩き折ったようだった。両舷の破孔がみるみる広がり、二つに裂けつつある船体に大量の海水がなだれ込んでゆく。金属の悲鳴をさんざめかせ、徐々に沈み始めた〈伊507〉の艦橋で、絹見はいまだ絶えない歌声を聞いていた。 前部甲板に左右から波が押し寄せ、百もの弦楽器が一斉に低音をかき鳴らした音が足もとを震わせる。泡立つ海面が粉砕した主砲を呑み込み、艦橋に向かってせり上がってきたが、歌声に混ざって聞こえるのは川のせせらぎに似た音だった。艦に海水が流入する音か、無数の破片に切り裂かれた体から噴き出る血の音か。少し考え、どちらでもいいと結論した絹見は、艦橋甲板に膝をつき、遮浪壁にもたれかかって体の力を抜いた。 もういいだろう? いまはなにも考えずに歌を聞いていたい。これぐらいのわがままは、許せ……。艦から振り落とされないよう、背中を支えてくれていた義弟に呼びかけて、絹見は腰に縛りつけた索に手をやった
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    Posted 12 years ago #

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