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だが、それも夢のようなことではあった

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  • Started 13 years ago by erovcm698

  1. 淳二は襖を閉め、白いワイシャツに着換えはじめた。彼が「マーサ」のバーテンとして住込んだのは去年の寒くなりはじめの頃だったから、もう十か月以上たっている。会社が潰れて失業したとき、兄の敬一《けいいち》がいきなり蒲田へ引っぱって来て昌代を紹介し、「当分この人の厄介になっていろ」 と、有無を言わさず住込ませたのである,ルイヴィトン モノグラム 財布。淳二はそれまでバーテンの経験などなく、それどころかバーそのものさえ余りよく知らなかったのだが、近頃はやっとその暮しにも慣れて、一応バーテンらしく見えるようになったところであった。 どうやら、劇画家の宮本一弘は、兄の敬一の友人らしかった。年齢は宮本のほうがだいぶ上だし、どういう知り合いかはっきりしなかったが、とにかく宮本の口ききで昌代が淳二を使ってくれたことはたしかである,クロエ 二つ折り財布。 淳二は裏側に金具がついたクリップ式の蝶《ちよう》タイを襟にとめながら、自分はこのまま水商売の人間になり切るのだろうかと考えて見た。好きで入った道ではないから、将来自分の店を持とうというような欲もなかった。だが、そう嫌でもなかった。毎日昌代のそばにいられることがたのしかった。昌代が望むのだったら、「マーサ」をもっと大きな店に育てるために、精一杯働いてもいい気分になっている。だが、それも夢のようなことではあった。昌代と結ばれて、年上の昌代を蔭《かげ》から盛りたてて行く……そんなあてもない空想をして自分をなぐさめているようである。「ごめん……」 下で男の声がした。淳二は眉《まゆ》を寄せ、首をかしげた。「ごめん……」 もう一度声が聞え、彼は急いで階段をおりた。準備の整った店の中に、わりと小柄な男が立っていた。「あの……」 どちらさまで、と尋ねようとすると、その男が蝶タイ姿の淳二を見て、「もう開店したんだね」 と念を押すように言った。「ええ」「じゃあ飲ませてもらおう」 客はカウンターの中央あたりのスツールに尻《しり》をのせた。「何にします」 淳二が尋ねると、男はじろじろと洋酒の瓶を眺めまわした。「何でもいい。ストレートと冷たい水をくれ」 ちょっと妙な肌合いの客だった。だが、店をあけたと言ってもまだ陽が高く、夜になるのには間があってちょっとちぐはぐな感じだったし、何よりも昌代抜きで営業をはじめるのは、淳二にとってはじめての経験であった。それで淳二はすっかり緊張していたから、その客のどこが妙なのか、深く考えるゆとりもなかった。「どうぞ」 オールドファッション・グラスに国産のウィスキーをダブルにして出すと、男は左手でそのグラスを持ちあげ、「そうか、ダブルか」 とつぶやくように言った。「マーサ」では、特に断わらない限り、ストレートはダブルで出すことになっていた。 淳二はおしぼりを出すのを忘れたことに気付き、ちょっとあわてた。「すみません、あと先になってしまって」 淳二はそう言っておしぼりを差し出した。「うん」 男はウィスキーをひと口飲んでからグラスを置き、冷えたタオルで顔を拭《ぬぐ》った。「まだ当分客は来んのじゃないか」「ええ」「そうだろうな。外はまだ陽が照っている」 淳二はドアのほうに目をやり、ぎごちない微笑を泛《うか》べて見せた,OAKLEY アウトレット。見憶えのない客だったし、やはりどうもやりにくかった。「ちょっと君に訊《き》きたいんだが……」「はあ」「この店は篠田昌代……という女性がやっている店じゃないのかね」「ええそうです」「やはりそうだったか」 男はほっとしたように言った。小柄で顔が蒼白《あおじろ》く、知的だがちょっと陰気な顔をしていた,ルイヴィトン 財布 レディース。細い目の奥にときどき鋭い光がのぞくようだ。「ママのお知り合いですか」「うん、まあそうだ。それで君は、その、ママの……」 男はあいまいに言葉を切って淳二をみつめた。その沈黙がばかに長く、淳二は閉口して自分から口をひらいた,ヴィトン 財布 メンズ。「僕はここのバーテンです」「そうか」 男は淳二がおりて来た奥の階段あたりへ目をやった。「この二階に住込んでいるんです」「すると、篠田昌代という女性は……」「いまは中央《ちゆうおう》のほうに住んでいます」「中央……」「あの、中央八丁目という、堤方《つつみかた》のほうの」「ああ、町の名か,aokley サングラス 通販。遠いのかね」「そんなでもありませんが、まあ、ここからですとちょっとあります」「中央八丁目か」 男は頷いてまたウィスキーを飲んだ。かなりいけそうな飲みっぷりであった。「バーテンというが、篠田という女性と縁つづきか何かじゃないのか」「いいえ」 淳二は首を横に振ったが、それではまた話が跡切れてしまいそうだったので、「でも、まったくの他人というわけでもありません」
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    Posted 13 years ago #

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