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いや、いいねえ、君

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  • Started 13 years ago by abel83jb

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    「院代たちは青山の土地に執着しているが、それは時代を見ないということだ。青山なんぞは君、いずれは家がびっしり建つよ。東京はどんどん発展する。世田谷なんぞもいずれは東京市に編入されるようになるにちがいない。大病院は郊外に建てる、そして青山は外来診察を主にして、郊外の病院に患者さんを送る、そういうふうにしなけりゃ駄目だよ、君。ぼくは何時だってひと時代もふた時代も先を見ているからねえ」 基一郎の弁舌を聞いていると、康三郎の胸には、やはりこの院長先生は人物だ、人にすぐれた人物だ、人は老いぼれたなどと言うけれどこの院長のめぐらす計画には間違いがない、という考えがどうしても浮んでくるのであった。とはいえ、康三郎には一抹の疑惑がないわけでもなかった。郊外に新病院を建てるのはよいとして、その資金はどこからくるのか? 現在楡病院の多からぬ従業員に対する給料も滞りがちで、あまつさえ真偽は定かではないが、古くからいる奥づとめの女中、下田の婆やなどの奉公人の貯金、その零細な金額までも院長が借りてしまったという噂を彼は耳にしていた。 そういう康三郎の胸のうちを見すかすように、事もなげに基一郎は言った。「君、ぼくには金は一文もないよ。それでもちゃんと病院はできる。君も覚えておきたまえ。頭だよ、そして信用だよ,oakley サングラス 激安。松原に土地を借りて病院を建てる。その病院を抵当にして金を借りて、土地と建築の費用を払う,coach 財布 アウトレット。まあ見ていたまえ、今度の病院はバラックだが、いずれはあの青山の病院のようにしてみせる。あの二倍の規模の宮殿のような病院にしてみせる。それまではぼくは死ねないよ。病院を作って、それからもう一度代議士に出馬する。君、ぼくの顔いろを見てみたまえ、つやつやしているだろう? 若い者そこのけだろう?ぼくがいったんこうと思ったからには、いつだって必ずその通りにやりとげるからねえ」 康三郎は歩きながら院長の横顔を盗み見た。その皺のきた顔はあまりつやつやしてもいなかったけれど、白いもののまじった長い眉毛の下の両眼には、たしかに人を説得するだけのいきいきとした輝き、なにか圧倒される活力があった,クロエ トートバッグ 新作。 三軒茶屋から先はまったくの田舎道である。日はうらうらと汗ばむほどに照り、道は白く乾いていた。そういう道を二人は長いこと歩いた。基一郎は上機嫌で、ひっきりなしにしゃべりつづけた。しばらくまえ世間を騒がした汚職事件、復興局に関する「あがちヶ原事件」についても語った。「君、渡辺といえば指折りの大地主だが、内実は苦しいんだねえ。だが政治にはいろんな裏面があるよ。君なんかにはまだわからないだろうが、政治というのはおもしろいよ。医者は個人が相手だが、これは一国が相手だからねえ」 梅ヶ丘という土地に着いた。辺りは一面の麦畠である。その中に一軒だけある見るからに豪農らしい家が地主であった。その家に入り、もう話はついているらしくひとしきり世間話をして、土地の図面を借りた。まだ昼に早かったが、茶を入れてもらって弁当も食べた。康三郎が見ていると、基一郎はもともとあまり固形物を食べない男であったのに、旺盛な食欲をみせて握り飯をほおばっている。 先生、どうも威勢がいいな、と康三郎はそんなことにも感服しながら思った。 それから、目的の土地にむかった,chloe 財布 人気。前方はもとより、横を向いても、うしろをふりかえっても、見渡すかぎりの麦畠である。小川が大層のどかに流れている。そこを渡っても、見えるものは青い麦畠のみ、はるかにぽつんぽつんと農家の藁屋根が散在している。 いや、これはひどい田舎だ、と康三郎は考えた。こんなところに病院を建てて、一体患者がくるものだろうか? そんな康三郎の思いにはおかまいなく、基一郎は先に立ってすたすたと歩いた。ふいに立止って、康三郎をふりかえった,oakley メガネ。「ここだよ、君」 同じような麦畠のひろがるどこまでも単調な見栄えのしない風景である。前方がやや小高くなっていて、雑木の林が、おそらくは櫟か楢の林がずっと向うにつづいている。康三郎がなんだかがっかりしてしまって返事をせずにいると、基一郎はほとんど浮き浮きした口調で言った。「見たまえ。ここはいい土地だ。前方が低く、後方が高い。これは末広といって、とても縁起がよいものなのだ。いや、いいねえ、君。とてもいいよ、ここは」「一体どのくらいお借りになるのです,chloe 財布 lily?」 と、仕方なしに康三郎は訊いた。「七千坪、いや八千坪はあるかな。それをきっかりと測らねばならんのだ」「私がですか?」 と、おどろいて康三郎は言った。そんな何千坪もある土地をまるきり素人の自分が測量できるはずがない。「しかし、その図面がおありになるのじゃありませんか?」「いや、こんなものは杜撰なものだよ。とても信用できない。あとあとに問題が残るからねえ。なに君、ぼくの言うとおりにすれば訳はない。ぼくはねえ、こういうことにかけては専門家だよ。ぼくの言うとおりにやってくれたまえ」 基一郎はカバンから、ところどころに紙縒を結んだ大量の紐を取りだした。
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    Posted 13 years ago #

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