。 それが変わったのは、艦を捨ててもう気を張る必要がなくなったというのがひとつ。心の中に浅倉大佐の言葉が入り込み、なにがしかの化学変化を起こしたというのがひとつ。なにがしかの中身は人それぞれだろうが、確かなことは、いまここにあるのは烏合《うごう》の衆でしかないという事実だった。 ここにいても仕方がない。いくら待っても訪れる救いはない。小松は意識する前に立ち上がり、搬出入口に向けて歩き出していた。「どこに行くんだ?」と誰かの声が背中にかけられたが、それだけだった。もう自分に命令を与える者はいない。引き止める何物もここにはない,chloe 財布 人気。小松は倉庫の薄闇から抜け出して、乾いた地面に一歩を踏み出した。 倉庫の周辺は、太陽に煮染《にし》められた緑と、焼け焦げたドラム缶がぽつぽつと横たわるばかりの荒れ地だった。その中にぽつんと通信長の背中が立ち尽くしており、昨日からひと言もまともな口をきいたためしのない通信長は、この時も頭上に広がる椰子の葉を漫然と見上げ、薄く開いた唇から意味不明の呟きを垂れ流していた。声をかけようかと思ったが、すでに脳が溶け始めている男に日射病の心配をしても始まらないと思い直して、小松は無言で通信長の背後を通り抜けた。 強烈な日差しが寝不足の目を射り、肌を焼いたが、冷めきった体に響くほどのものではなかった,oakley サングラス 激安。蒸し暑い艦内で、フリッツ少尉が黒服でも涼しい顔をしていられたのは、あるいはこんな気分だったからかもしれない。ふと思いつきながら、小松はもう何年も自分の意志では歩いていなかったような気がする足を動かし、根拠地隊本部に続く道路へと歩いていった。 ローラー車で踏み固められた道路に出ると、折り重なる椰子の葉の向こうに通信所の建物が見えた。かつて米軍がこの島に建設した通信所の建物には、いまは旭日旗《きょくじつき》が掲げられ、帝国海軍の拠点であることを示していたが、風がなくては白地に赤の鮮烈な図柄も確認できず、しおたれた旗は立ち竦んで小松を見下ろすばかりだった。 待っていても仕方がないなら、自分の足で近づいてゆくしかない,ルイヴィトン 財布 モノグラム 三つ折り。教えてくれる者がいないなら、自分の目で確かめなければならない。なにが誤りで、なにが正しいのか——。小松は知らず知らず、通信所を目指して歩き始めていた。 あそこに根拠地隊の司令がいる。浅倉大佐もいる。だからどうという思考は働かないまま、自動的に動く足が小松を根拠地隊本部のある島の中腹へと運んだ。すべてが静止した世界で、黙々と歩くその体が唯一の動くものになり、地面を踏みしめる足がたったひとつの音を響かせた。[#ここから7字下げ]※[#ここで字下げ終わり] 無線受信機の前に座り、ヘッドフォンを耳に当てて鉛筆を動かす背中は、もう三十分以上もそのままなのだった。鹿島は渕田参謀長と何度も横目を見交わし、ヘッドフォンから漏れ聞こえるモールス信号の音に耳を澄ましていた。 無論、すべては聞き取れず、米軍のストリップ方式で送られてくる暗号電文を解読する術もないが、その内容|如何《いかん》で自分たちの運命が定まると思えば、耳の鼓膜に自ずと神経が集中した。トントンツートントン。トントントンツーツーツートントン。日頃は常時三人の当直が就く電信室にひそやかな信号音が流れ、分厚いコンクリートの壁に跳ね返って行き場なく滞留する。その間にも鉛筆が紙の上をさらさらと滑り、ヘッドフォンをかぶった頭が微かに揺れたと思った刹那、信号音は出し抜けに途絶えた,ヴィトン 財布 メンズ。 鉛筆を机の上に転がして、浅倉良橘はヘッドフォンを外した。信号を直訳した紙を手に取り、備え付けの暗号書はもちろん、手帳のメモひとつ開かずに目を通してゆく。難易度の高さでは史上最高と言われる複雑な暗号方式を、この男はすべて記憶しているのか? 呆気に取られた鹿島の眼前で、浅倉は不意に赤い唇を歪め、端正な横顔に笑みを浮かべた。 生唾を飲み下した渕田を横目に、鹿島は「……米軍は、なんと?」と恐る恐る口を開いた。浅倉は無言で暗号の羅列に目を走らせ続け、終《しま》いまで読み通したらしい紙片を机に戻してから、おもむろにこちらを見返した。「〈伊507〉が戦っている」 笑みを湛えた唇が発したのは、そのひと言だった。米軍がいつどのような方法で迎えを寄越すか、最大の懸案事項からまったくかけ離れた返答に、鹿島はもういちど渕田と顔を見合わせた。「我が方は押しているよ」 付け加えると、浅倉は再び無線機に向き直った。ヘッドフォンをかぶり、やはり空《そら》で返信の暗号電文を打ち始める。 L5が同時多発的に発生し機密保持部隊の処理能力を超えたと判断される場合、緊急マニュアル第34号は適用されるのか。また処理能力超過の判断権限者は施設長と考えて良いのか。解——のような形をしたものが、大人の首許の高さに突き出ているのである。「はい」 その{dPI備の向こうの のような組織が生まれる素地ができた,スピードマスター オメガ。あなた方の安全も守られてきたのです。誰かにそれを知っておいてほしいと思って、つい……
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トントンツートントン
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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