低い、底にひびくような声量である。お万阿は聞くうちにわが身のまわりに絢爛《けんらん》たる法華世界がひろがってゆくようにおもい、歓喜は何度めかの絶頂に達するのである。 やがて夫婦は、体をはなした。紅帳はゆれることをやめた。「お万阿、きっと子を成すぞ」「そのようにありたい」 お万阿の白い腕《かいな》が、庄九郎の首すじに巻きついた。「法華経の功《く》力《りき》が、お前をつつんでいる,OAKLEY サングラス 店舗。あの経文を唱えれば、多《た》宝仏《ほうぶつ》、十方《じっぽう》の諸仏、菩《ぼ》薩《さつ》、日と月と、月と日と、星と星と、さらにはまたまた漢土、日本国の善神が、ことごとくここに集まられてわれらが願いを聴きとどけ給うというありがたい宝経だ。その証拠にお前のその白い肌《はだ》がぼっと暈光《うんこう》を発している」「うそ」 気味わるそうに、両の乳房をおさえた。お万阿の掌ではその隆起はおさえきれない。「お万阿、将来《すえ》のことを話そう。諸仏諸神が照鑒《しょうかん》なされている」「ほんと?」 お万阿は大いそぎでうすぎぬ《・・・・》の紅帳を見まわした。なるほどそう思ってみれば、闇《やみ》の中ながらも、ところどころに怪《あやかし》めいた淡い光芒《こうぼう》がゆれているようである。 ありようは月の光にすぎないのだが。「話して」 お万阿は腰を寄せた。 その部分が熱い,ルイヴィトン モノグラム 財布。 庄九郎はさすがに、ぶるっと慄《ふる》えた。お万阿の体には、無限無量の歓《かん》喜《ぎ》仏《ぶつ》が在《ま》すのではあるまいか。「わしは将軍《くぼう》になれる」「まあ」 お万阿にはお伽話《とぎばなし》にすぎない。が、寝室を楽しくするためにこの会話の拍子、小鼓、笛を奏《かな》でようと思っている。「本当だ」 庄九郎にとっては、お万阿のようなお伽話ではない。必死な現実感をこめている。「お万阿、おれは夢想家ではない。夢想家というのは、いつも縁側にいる。縁側で空をながめている。空から黄金でも降ってくるのではないかと思っている,ルイヴィトン 財布 モノグラム 三つ折り。場合によっては、空に賽銭《さいせん》を投げる。神仏に祈るというやつだ」「あ、旦《だん》那《な》さまも夢想家」「なぜだ」「いま、経文をお誦《ず》しになりました」「あれは祈ったのではない。神仏に命じたのだ。わしにとって神仏は家来でしかない。わしのために働く。働かねば叱《しか》る。叱って聴かなければ、仏像、仏閣、社殿を破壊して人の住む地上から天上へ追っぱらってやる」「こわい」「わしは現実に動いている,coach 財布 アウトレット。いまも経文を誦しはしたが、お万阿の体にわしのものを注ぎいれた。わしはいつも街道にいる」「縁側ではなく?」「そうだ、街道にいる。街道にいる者だけが事を成す者だ,coach 財布 人気。街道がたとえ千里あろうとも、わしは一歩は進む。毎刻毎日、星宿《せいしゅく》が休まずにめぐり働くようにわしはつねに歩いている,coach財布レディース。将軍への街道が千里あるとすれば、わしはもう一里を歩いた。小なりとも美濃の小地《こじ》頭《とう》になった」「西村勘九郎様でございますものね」「また名前がかわる」 庄九郎は、枕もとの壺《つぼ》に手をのばした。一つぶ、塩豆をとりあげた。 噛んだ。「でも、旦那様、いくたびお名前が変わろうともお万阿にとってはいつまでも庄九郎様でございましょうね。西村勘九郎様など、よそのおひとみたい」「いやさ、お万阿」 庄九郎は、大《おお》真面目《まじめ》である。「西村勘九郎は美濃にいる」「おや」 と、お万阿には意味がよくわからない。「するとここに在《いま》す殿御は?」「山崎屋庄九郎だ」 かりっ、とまた塩豆を噛んだ。「すると、別人でございますか」「おれは二つの人生を生きている。美濃の西村勘九郎は天下をねらう大泥棒《おおどろぼう》だ」「えっ」 お万阿は息をとめた。「驚かずともよい。とにかく美濃の西村勘九郎といえば、天下の名族土岐氏の一門で、美濃でいう長井氏、斎藤氏、明《あけ》智《ち》氏、不破《ふわ》氏などとともにゆゆしい武門の姓である。しかもその西村氏の名跡を継ぐ勘九郎なるやつは、美濃守護職土岐家の別家土岐頼芸公の執事、さらには美濃の諸領主のなかで随一の領地をもつ長井利隆の執事を兼ねている」「えらいひとなのでございますねえ」 お万阿は、ほっと溜息《ためいき》が出た。出たが、そのえらい殿様というのは、いまここに半裸でいる庄九郎その者ではないか。「そうでございましょう」 と、お万阿は念を押した。「そうであるものか」 庄九郎は笑わない。「ここにお万阿と寝ているのは、山崎屋の主人庄九郎、とりもなおさずお万阿の亭主である」 ややこしい。「すると?」「そう、西村勘九郎という男には、別に妻なり妾《めかけ》なりが要るというわけだ。美濃で門戸を張っている以上、当然なことであろう」「………?」「勘九郎にも妻を持たせてやりたい。そのようにこの庄九郎は考えている。いずれよい女がおれば、わしは世話してやる気だ」「ちょっと待って」 お万阿は、頭を整理しようとした。 が、庄九郎はその余裕を与えない
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「そうであるものか」 庄九郎は笑わない
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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