野口医師が和室の手前まで進み出、「さあさ、これを」 云って、しのぶに向かって右手を差し出した。「黄色い方が栄養剤、白い方が軽い鎮静剤。栄養剤はすぐに飲めばよろしい。鎮静剤の方は、どうしても不安でたまらなくなったり、眠れなかったりした時に」「——はあ」 しのぶはちょっと首を傾げたが、やがて緩慢に頷きを返し、「——ありがとうございます、先生」 そう云えば——と、私は思い返す。昨日玄児が云っていた。しのぶは五年ほど前に、野口医師の紹介でこの屋敷にやってきたのだ、と。慎太の父親は早くに死んでしまったらしく、母子二人だけでここに住み込んでいるのだ、と。 その二人が暮らす部屋の様子は、まずまず小ぎれいに片づいている、といった印象であった。床も壁も天井も黒という暗黒館的な[#「暗黒館的な」に傍点]内装はさっきの部屋と変わらないが、こちらにはやはり生身の人間の生活感が染みついている,オメガ シーマスター。書き物机のまわりに散らばった絵本や画用紙や、小さな円いテーブルの上に並んだ湯呑みや急須や菓子皿や。壁にはカレンダーが貼られ、和室と洋間を仕切る襖戸にはいくつもの破れ目がある。和室の隅には折りたたんで重ねられた衣類の影が見える。「蛭山さんが死んだのは、明らかに誰かに殺されたものと見られる」 野口医師と入れ替わりで和室の手前に立ち、玄児が単刀直入に切り出した。医師から受け取った薬を枕許に置こうとしていたしのぶの身体が、瞬間びくっと震えた。「それでとにかく、第一発見者であるしのぶさんの話を聞いておきたくてね。そこで楽にしたままでいいから、いくつか質問に答えてくれないかな」 しのぶはのろのろと上体を起こす。私は玄児の斜め後ろに立って、和室の薄暗がりの中、布団の上に正座する彼女の様子を見守っていた。「昨夜から今朝にかけてずっと、しのぶさんはあっちの部屋の居間にいたということだけれども、そうなんだね」「——はあ」「最後に奥の寝室を覗いたのは何時頃のことだったか、憶えているかな」「——たぶん」 しのぶは心許なげな声で答えた。「一時か一時半か、そのくらいだったんじゃないかと。慎太の様子を見に、一度こちらの部屋に戻りまして、そのあと……」「その時は何も不審なところはなかった,OAKLEY アウトレット?」「——はい」「寝室の明りはどういう状態だったんだろう」「——ベッドのそばのスタンドだけ、点けてあったように思いますが」「スタンドだけか。それはそのあともずっと,ヴィトン 財布 メンズ?」「——はい」「ふん。で、寝室の扉には、鍵を掛けたりはしていなかったんだよね」「——はい」「廊下に出る扉も?」「——そうです」「しのぶさんはその後、あの居間の寝椅子で眠り込んでしまったという話だが?」「——はあ,ルイヴィトン モノグラム 財布。うとうとと、つい」「じゃあその間、こっそり廊下から入ってきて、しのぶさんに気づかれないように奥の寝室へ忍び込むことは、誰にでもできたわけだ」「——はあ」「ぐっすり眠っていて、誰かがそばを通っても気がつかないような状態だったわけかな」 しのぶはいったん「はあ」と頷いたが、すぐに「あ、いえ」と言葉を|繋《つな》げた。「その辺は、何とも」「と云うと」「浅い眠りでしたから。わたし、普段もあまり寝付きの良くない方で、眠っても夢ばかり見て、ちょっとした物音ですぐに目が覚めてしまったり。ですから……」 玄児は「ううん」と|唸《うな》って、「しのぶさんを起こしてしまわないよう、犯人はよっぽど用心して部屋に忍び込んだ——か,oakley サングラス 激安。あるいは……」 |蟀谷《こめかみ》に左手の親指を押しつけながら、玄児はそこで少しく口を噤んだ。私は同じ位置に立ったまま二人のやり取りに耳を傾けていたのだけれど、そうするうちに、多少収まりかけていた悪心がまた胸に広がってきていた。鳩尾に当てた手に、粘ついた脂汗が滲む。「今朝しのぶさんが目を覚まして、蛭山さんの異常に気づいたのは八時半頃のことだったと聞いているが、間違いないかい」「——はい,オメガ メンズ 時計。そのくらいの時間でした」「その時も、明かりはスタンドだけが点いていたんだね」「——と思います」「寝室を覗いて蛭山さんの姿を見て、真っ先にどう思った」「それは……」 しのぶは少々口ごもったあと、みずからの熱を診るように掌を額に押し当てながら、「死んでいるのではないかと、すぐに」「どうして、そう」「——何となく様子がおかしい、と感じたんです。ベッドに横たわった姿勢が、前に見た時と違っていたのかもしれませんし……ああ、でもそうです、昨夜の時点で小田切さんから、朝まで保つかどうか分らないらしいという話を伺っていましたので、それで……」「近寄って確かめてみたのかい」「——いえ」 しのぶは小刻みに首を振った。「とにかくすぐ、小田切さんに知らせに」「蛭山さんの首に何かが巻きついていたのには、じゃあその時は気づかなかったんだね」「——はあ。そのことは、小田切さんを呼んで戻ってきて、もう一度あの部屋に入った時に」「なるほど」と頷いて、玄児はまた蟀谷に親指を押しつける。「念のために確認するけれども、しのぶさんが居間の寝椅子で眠り込んでいた間——もっと具体的には午前二時頃から四時頃の間に絞られるんだが——、何か不審な物音や気配を感じたりすることはなかったんだね」「——何も」
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「一時か一時半か、そのくらいだったんじゃないかと
(1 post)-
Posted 12 years ago #
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